インリアルアプローチ

「こどものことばを増やすために何をしたらいいですか?」「こどもと会話ができない」と相談されることがあります。

「話しかけても続かない」と感じる場合は、会話よりも、やりとりに注目してみてはどうでしょうか。

こどもとの相互的なコミュニケーションを学習し促進するためのアプローチ、インリアルアプローチを参考に、まずはやりとりすることの楽しさについて感じて欲しいと思います。

インリアルアプローチには、大人の基本姿勢ーSOUL(ソウル)ーとして

Silence 静かに見守ること 

Observation よく観察すること 

Understanding 深く理解すること 

Listening 耳を傾けること  

を挙げています。SOULは言語訓練でもこどものもっている力を知るために必要な関わり方です。

他に、

🍎お互いに伝えたい意欲がある

→好きなことや知ってること、園や学校でしたことや聞いたことなど興味の有無によって反応は異なるので話しやすい内容がいいでしょう。

🍎表現は、ことばじゃなくてもOK 視線や指さしでもうなづきでもいい

→ことばにこだわりすぎないことは重要です。

🍎こどもが使っている表現方法(ことばやジェスチャー)を使っておとなが話すこと

→こどもの言語レベルにあわせることで、やりとりが続きやすくなる。

🍎どんな内容も受け入れる気持ちが大事。失敗やトラブルなどの話になっても、問い詰めたりしない。

🍎「わからん」、何も言わない等の反応に対して質問攻めにしない。一方的な関係性にならないように気をつける。

→こどもの苦手なことや、かなしいことを最後まで聞いてあげるだけでも意味があります。(=伝えたい気持ちを優先する)一緒に受け止めることが大事です。

🍎こどもの反応を待ってあげること

→こども自身が考え、表現することが大事です。

おこさんからの質問があると、会話はさらにふくらんで続いていきますね。

「たくさんおはなしできたね。また、しようね。」と振り返ってみる。

🍎目標は楽しむこと

→日常場面でやりとりの回数を増やす、いつもと違う反応を引き出すなど

やりとりを楽しんでください。

 


参考書籍:

竹田契一,里見恵子,子どもとの豊かなコミュニケーションを築く インリアル・アプローチ,1994

湯汲英史,小倉尚子,一松麻実子,藤野泰彦,発達障害のある子どもと話す27のポイント わかりたい気持ちを高めるために,かもがわ出版,2011

食べる⑤発達は順番に

体の発達と同じように、食べる機能にも発達の順番が有ります。

お口の動きは、体の動きの発達に比べて見えにくいため、どのくらいの成長段階なのか分りにくいですよね。
ハイハイをしている赤ちゃんが走れないのと同じで
お口の発達が未熟な子に大人と同じものを食べさせるのは無理があります。

例えば、離乳食を始めたばかりの赤ちゃんには、おにぎりやパンはまだまだ食べられません。

育児書に書かれた離乳食の時期を参考にしつつ、子どもの口の動きからどの時期に食事を進めていくかを決めていけるといいですね。

食べる機能の発達

時期は個人差がありますが、発達の順番は下のように進みます。
体の発達と同じように一気にジャンプして、突然大人と同じご飯が食べられるようにはなりません。

正しい「食べる動き」を繰り返して経験することで、ゆっくり時々休みつつ、その子のペースで発達が進んでいきます。


  哺乳期   ミルクを吸って飲む
         
離乳食初期   唇を閉じて、食べ物を取り込んでから飲み込む。
         ↓
離乳食中期   舌と上あごで押しつぶす
         ↓
離乳食後期   歯や歯茎ですりつぶす


参考書籍:金子芳洋ほか,上手に食べるために(発達を理解した支援),医歯薬出版株式会社,2005

食べる④歯みがきは食べるを育てる準備

乳歯は、抜け替わるから虫歯になってもいい、というものではありません。
虫歯が進行していくと歯の痛みだけでなく歯が溶けていきます。

そうなると、前歯で食べ物をかじりとれなくなったり、奥歯で食べ物をすりつぶせなくなります。
食べにくさや、痛みから柔らかい物しか食べられなくなってしまいますよね。
唇や舌を使う経験をする機会をみすみす減らしてしまうのです。

「歯磨きを泣いて嫌がるからできない。」
と思われている方もいるかもしれませんが、子どもは自分からお口の中に物が入ってくる練習を指しゃぶりや玩具しゃぶりでもしていますので、スモールステップで歯磨きに慣れていきましょう。
しっかり見守りができる環境であれば歯ブラシを子どもが自分で持ってもいいでしょう。口の奥に突き刺さりにくく設計された歯ブラシが今は発売されています。

「初めての歯ブラシ」と検索してみてお子さんに合ったものを探してみてくださいね。

まずは、玩具かじりのように安全に配慮された設計の歯ブラシを自分でなめたりかじったりするところから始めてみるといいかもしれません。

機嫌がいいときに、大人が手伝いながら少しずつ慣れていきましょう。

美味しい味の子ども用ハミガキペーストもいいですね。

 

歯磨きを始めるのに「早すぎる」はありません。

歯磨きをどうすすめていけばいいか悩んだ時は、市の乳幼児健診などを機会に歯科医師や歯科衛生士の方に相談してみるのもいいでしょう。

 


関連記事 発音を育てる(うがい)

参考書籍:金子芳洋ほか,上手に食べるために(発達を理解した支援),医歯薬出版株式会社,2005

お近くで言葉の相談先を探すなら

言葉の事を相談したいけれど、どうやって相談先を見つければいいのか悩まれている方
日本言語聴覚士協会のHP各県の言語聴覚士会のHPをご利用ください。
言語聴覚士が所属する病院や施設を探すことが出来ます。

例えば岡山県なら

検索  岡山県 言語

言語聴能訓練室のHPを見て下さっている方の中には

言葉の事を相談したいけれど、どうやって相談先を見つければいいのか悩まれている方も多くおられるようです。
手あたり次第、病院に電話してみてもリハビリをしていない病院もありますし
リハビリがあっても、言語聴覚士がいないという病院はまだまだ多いかと思います。

そういう時は、日本言語聴覚士協会のHP各県の言語聴覚士会のHPをご利用ください。

ただ、お子さんの言葉の相談をされたい方は全国に沢山おられるのですが
特に、小児の言葉の相談ができる病院は数が少なく予約をしても半年以上、時には数年待ちの自治体もあるようです。

すぐに言語聴覚士が在籍している病院に行くことが難しくても、かかりつけの小児科の先生に折々に相談してみましょう。
小さなお子さんの発達は個人差が非常に大きいので、相談当初は「問題ないよ」と言われても、経過を見ていくうちに気を付けるといい事を教えてくださったり、必要があると判断されれば相談先を紹介してくださったりすると思います。

また、地域の保健師さん、子育て支援センターや園の先生にも不安な事は気軽に相談してみてくださいね。

もちろん、相談できるまでの間の接し方や遊びながらできる練習は言語聴能訓練室のブログもご覧ください。

倉敷市子育て支援センターで「言葉のはなし」をします

こんにちは、令和4年度が始まりましたね😊

令和3年度は度重なる臨時休館で利用者様にはご迷惑おかけいたしました。

ご理解とご協力ありがとうございました。

令和4年度も言語聴能訓練室をよろしくお願いいたします。


倉敷市子育て支援センターで「言葉のはなし」をさせていただきます。

    日時:4月12日(火) 10:30~11:30

    場所:くらしき健康福祉プラザ3階 和室

    定員:5組

  申し込み:倉敷市子育て支援センター(プラザ内)に来所にて

       お申し込みください。

お問い合わせ: 倉敷市子育て支援センター 

        TEL 086-434-9865

子どもが友達の吃音に気付いたら

吃音があるといじめられる?

 吃音があることが周囲に気付かれると、子どもがいじめられてしまうのでは?とご相談を受けることがります。

 事実、吃音でからかいやいじめをうけて深く傷ついた方は沢山いらっしゃいます。 そういった悲しいいじめが今後起きないようにするためには、まず大人が正しい知識を持ち「からかいやいじめを許さない」ことです。そして周囲の子ども達にも正しく吃音について伝えていく事が重要です。(吃音のお話①

子どもが友達の吃音に気付いたら

 吃音の話し方は、わざとではないので「真似しない」「笑わない話し終えるのを待つ」の指導を徹底しましょう。

 6歳で、ほぼ100%の子ども達が相手の言葉がつっかえることに気付いている事がわかっています。

 また別の研究では、吃音の話し方を見た際に、子ども達はつっかえた話し方に気付いてどう反応したらいいか分らず「笑ったり」「戸惑う仕草」をしたそうです。

 子ども達が早くに吃音の話し方を聞き、正しい知識や接し方を学ぶことで差別や偏見を持たず成長することにつながります。

なんで〇〇君は「おおおおはよう」ってなるの?

 子どもに「〇〇くんって“おおおおはよう”っていうんだよ 😮 」と素朴な疑問を投げかけられた際は、周囲の大人はしっかりその疑問に耳を傾けて話を聞いてあげてください。

 疑問を口にしたことで「そういう事を言わないよ」と注意する必要はありません。注意や話を逸らすことで「“おおおおはよう”ってなるのは良くないことなんだな 🙁 」と感じさせてしまう恐れがあります。

 答え方の例

  「そうなんだね、時々“おおおおはよう”ってなるんだね」

  「“おおおおはよう”ってなるお友達もいるんだよ」

  「なんでなるかは分からないけど、わざとじゃないよ」

  「言いたいことが言えるまで待ってあげてね」……など

 「そういう話し方もある。」「わざとではない。」「悪い事やおかしい事ではない。」というメッセージを伝えられるといいですね。


関連記事

吃音④子ども達が受けたい支援(指導者向け)

参考論文

伊藤智彦 構音,流暢性に対するメタ言語知識の発達 音声言語医学36(1995)

食べる③玩具しゃぶりは自食の準備

前歯が生えてくる時期になると、お口を左右非対称に動かしてモグモグするようになってきます。
これは、食べ物をすりつぶす動きが出来るようになってきたサインです。

このサインが出始める頃は、玩具しゃぶりや玩具噛みが盛んになってきます。
大きめの食べ物を自分で手づかみで食べようとするしぐさも見られるようになるでしょう。

色々な形、硬さ、味のあるものを舐めたり噛んだりする事で食べられるものと食べられないものを知っていきます。
また、どのくらいの量を入れても大丈夫なのかも試行錯誤して学習していきます。
他にも、お口の中に硬いものが入ってきた時に過剰に反応をしなくなるための練習でもあります。

まだまだ、食べ物を口の中に詰め込んで窒息の危険があったり、誤って食べてはいけない物を飲み込んでしまったりする事がある時期なので
赤ちゃんから目を離してはいけませんが、できるだけ「自分で!」を大切にしてあげていっぱい経験をさせてあげてくださいね。


関連記事:発音を育てる(舐める食べる)食べる②指しゃぶりは哺乳の準備

参考書籍:金子芳洋ほか,上手に食べるために(発達を理解した支援),医歯薬出版株式会社,2005

食べる②指しゃぶりは哺乳の準備

指しゃぶりはお腹の中にいる頃から始まっています。そして、生まれてから必要な栄養であるミルクを飲むための大切な練習です。
しかし、永久歯が生え始める5歳ごろになっても指しゃぶりをしている場合、前歯だけでなく奥歯の歯並びや顎の成長にも影響が出てくることがあります。
その結果、食べ物を飲み込む時に普通はしない舌を出しながら飲み込む動きがでたり、口呼吸が多くなり風邪をひきやすくなったりする影響もあります。

指しゃぶりはいつから対応したらいい?
3歳までの生理的な指しゃぶりは見守って大丈夫だと言われています。
3歳を過ぎて保育園や幼稚園に入ると生活環境が大きく変化することで、自然と指しゃぶりが減ってくる子もいます。
しかし、環境の変化に不安を感じて指しゃぶりの頻度が増えてしまう子もいます。
その場合は、指しゃぶりではなくその子の不安を軽減する為に、ご家族や園の先生と様子を観察してあげてください。
3歳から5歳くらいの間に徐々に減ってくるようならのんびり成長を見守ってあげましょう。
ただ、5歳以上になってもよく指しゃぶりをしているようなら、小児科医師や歯科医師にも相談してみましょう。

無理のない目標設定で

お家では、好きなテレビを見ている時間は指しゃぶりをしないようにぬいぐるみやお人形を両手で抱っこしてみる。
寝かしつけの時間は、お父さんやお母さんと手を繋いで寝る。
1週間の間に2~3日指しゃぶりをしていない。 などなど…
出来る範囲での目標を決めて、出来たらカレンダーにシールやスタンプを押すなど目標がクリアできたことを子どもの目で見て分かる様に工夫してあげましょう。
ゆっくり、焦らず自信をつけてあげつつ指しゃぶりからの卒業が出来るといいですね。


参考書籍:金子芳洋ほか,上手に食べるために(発達を理解した支援),医歯薬出版株式会社,2005

食べる①

 

 

 

 

 

 私たち、言語聴覚士は「話すこと」や「聞くこと」などのコミュニケーションに障害を持った人や「食べること」に障害を持った人に対して、検査や回復するためのリハビリテーションを一緒にしていくことを仕事としています。

 ことばの育ちには、口や舌、唇を動かすことが密接に結びついています。以前「発音のお話③」や「発音を育てる(食べる)」でも書いていますので是非読んでみてくださいね。

 正しい発音をする為に必要なお口の中を刺激したり、舌を思い通りに動かす練習を毎日できる場面。それは「食事」です。
 食事で、お口を動かすたくさんの経験を子どもにさせる為に、赤ちゃんが食べる準備の為にしている事やお口の中の環境をより良く保つためにできる事。また、食べる事の成長を見ていくポイントを次回から書いていきたいと思います。

ことばあそび⑫糸電話

子どもは「大きい声を出さないで」と言われてもどうすればいいのかピンときにくいものです。

そこで、自分の話している声の大きさを意識する機会として今日は【糸電話】をしてみたいと思います。

離れているとつい大きな声を出したくなってしまいますが、普通の声の大きさでお話するように声掛けしながら遊んでみましょう。

ついでに、新型コロナ感染防止のために、言われているのはソーシャルディスタンス。

その距離はだいたい2メートル

大人なら、なんとなく「これくらい」と分かりますが、子ども達には、まだまだ難しいので、遊びの中で「これくらいの距離」と教えてあげられるといいですよね。

 

【ねらい】

1)糸電話から聞こえる声の大きさを意識、調整する。

2)順番に話す。

3)聞くこと、伝えることを意識する。

4)ソーシャルディスタンスの距離を知る。

【対象】

年長(年中以下の子は糸をなくして電話ごっこで楽しめます。)

【用意するもの】

紙コップ(2個)糸(2メートル)、針(糸を紙コップつける際に利用)

糸 を 固定 する 爪楊枝(1本を半分の長さにして使用)

*爪楊枝がないときはセロテープで貼る。

【作り方】

①糸を外側から、紙コップの底の中心に針で通し、糸の先に半分にした爪楊枝を結びつける。

②糸の反対側の先ももう1つの紙コップに同じように固定する。

⭐ 作り方検索一覧外部サイトに移動します) 

ことばあそび 【いとでんわ】

【できるにんずう】

2人

【やりかた】

①いと が ぴん と はるように、はなれて たつ

②はなす ひと は くち に かみこっぷ を あてて はなす。きくひと は かみこっぷ に みみ を あてて きく。

はり は ささると ケガ を するので

おうち の ひと と つくりましょう。

 

 

 

 

じゅんばんに、はなしてね。

                                    来

 

糸が くびに巻き付いたり、大きな声をだしすぎたりしないように気をつけて遊んでくださいね。

糸電話が難しい子は、コップだけもって電話ごっことして遊ぶだけでもたのしいですよ。

これからのブログの参考にしたいと思います。
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どんな些細なことでもひとことでもうれしいです。お待ちしています。

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