吃音の友達にできること

吃音はお笑いで言う”噛む”ではありません。

言葉を言い間違えたり、つっかえたりするのを「カム」と言ったりして
テレビのバラエティー番組では、ツッコミの対象になったりすることもありますよね。

でも、それは「話術で稼いでいる」テレビの中の話。

一般人である私たちが、言葉を全くつっかえたり間違ったりせずに話すのは至難の業です。
話したいことがあるのに、言葉がつっかえたりするアクシデントにいちいちツッコミを入れられたり、笑われたりするのは気分がいいものではありません。

吃音の話し方の人にとって、言葉を繰り返したり、つっかえたりする話し方がその人にとって自然な話し方です。それにも関わらず、逐一話し方に反応されていては、次に何を話したいのかを考えることもままなりません。

常に(スムーズに話せるのか、嫌な思いをするのではないか)という心配と不安抱えて日常を過ごし、そんな不安から、吃音に気付かれないように努力している人もいます。

もしも、あなたの友達や知り合いに吃音の人がいたら気持ちを和ませようという心づかいからの真似やツッコミは不要です。
代わりに次の事に気を付けてあげてください。

・言葉を繰り返したり、つっかえたりしても笑わない
・話の内容を聞いて、内容にリアクションする。
・話が止まっても「それから?」と続きを促す程度の相槌で、話し終えるのを待つ。
・「おちついて」「あせらなくていい」等のアドバイスをしない。
・イジル人がいたら「わざとじゃない。イジルなよ」とイジラないように伝える。

あなたの心づかいが、誰かの気持ちをきっと和ませてくれるはずなので
どうかよろしくお願いします。


参考書籍 菊池良和,吃音の合理的配慮,学苑社,2019

関連記事 吃音④子ども達が受けたい支援(指導者向け)

 

吃音⑤具体的な合理的配慮

 学校での生活を安心して過ごすための合理的配慮や基本の対応を知っておくと、先生との相談の場で具体的な話ができると思います。

 以下にご紹介する事は、もうすでに実践されている事が含まれているかと思いますが改めて確認していただければと思います。

 

話し方のアドバイスをしない

 子どもが言いかけた言葉を先取りして続きを代わりに言う事は必要ありません。最後まで自分の言葉で話しきることが大切です。

 「ゆっくり」「おちついて」等のアドバイスも効果がないとされています。

 また、最後まで話せた時には話の内容に注目し自分の思いが伝わったことを経験できるようにしてもらうようにしましょう。

 吃音の子どもは自分が「吃音が出ずに話せたか」と言う事に注目しがちです。発言が出来た時は「スムーズに話せたね」「詰まらなかったね」等の言葉への評価ではなく「この発表は〇〇がよかった」等、内容について話を聞くよう気を付けてもらうといいでしょう。

からかいは許さない

 子供たちの中で吃音や吃音に伴う動作等へのからかいや嘲笑は、他のからかいや嘲笑と同じように対応していただきたいと思います。 

 吃音についての知識や情報がない子ども達にも「わざとそういう話し方をしているのではないこと」、「自分の努力ではどうしようもないこと」など、を丁寧に説明して、周囲の理解を深めていくことで、話しやすい環境づくりがをすることができます。

斉読をする

 「吃音の話(指導者向け)③学齢期の吃音の特徴」でもお話しましたが、本読みなど他の人と一緒に読む(一斉読み)等の条件下では吃音はほとんど出ないのが特徴です。

 授業での音読は、クラス一斉の音読にしたり二人組の音読にしたりするなどの形をとってみると効果的であることを伝え、授業に取り入れてもらうようお願いしてみましょう。

 また、本人が特別扱いされているという思いを抱かないよう、クラス全体で取り組んでもらえるように配慮を求めるといいでしょう。

【おすすめ吃音関連サイト】以下リンクは外部サイトに移動します。

吃音ラボ

全国言友会(吃音(きつおん)のある人のセルフヘルプグループ)

参考書籍: 菊池良和, 吃音のことがよくわかる本, 講談社, 2015年

     吃音のことがよくわかる本

吃音④子ども達が受けたい支援

吃音があるからといって、すべての子どもが同じ支援を望んでいるわけではありません。まずは、どういった支援、配慮を望んでいるのか本人と話し確認することが大切です。

授業中にしてほしい支援 

 

 

 

 

 

・ことばの先取りをしない

・話し終えるまでゆっくりまつ

 特にこの2つは多くの子どもが授業中の支援として望んでいることがわかります。

 ことばがつかえて苦しそうだからと助けるつもりが、かえって子どもの話す意欲をそぐこともあります。

 聞き手が焦らず待つだけで、救われる子どもも多くいることを知っていただければと思います。

吃音が残っても困らないように

 2~4歳の20人に1人。約5%が吃音を発症(発吃)するといわれています。

 発吃から3年で、その内男の子なら6割、女の子なら8割の子が自然と吃音が消えていきます。

 しかし、2割から4割は吃音が残ります。

 どの子が、自然に消えていくのか、長く続くのかは予測がつきません。

 しかし、学童期になってもなお吃音が自然に消えていない場合、吃音が長く続くかもしれないことを考慮し普段の授業から支援してもらえるよう、学校の先生とも話ができるといいでしょう。


関連記事 吃音⑤具体的な支援(指導者向け)

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参考書籍: 菊池良和, 吃音のことがよくわかる本, 講談社, 2015年

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吃音③学齢期の吃音

学齢期の吃音の特徴

 
 学齢期の吃音の特徴としては以下のようなものがあります。ただし、個人差がとても大きくすべてが当てはまるわけではありません。

波がある

 吃音の症状には波があります。吃音の波の周期は、個人差が大きいのですが1ヶ月から数ヶ月単位で良い時期と悪い時期を繰り返すことが多いようです。

吃音が出にくい場面と出やすい場面がわかれている場合があります。

 例えば、国語の時間の音読場面ではほとんど吃音が出てこない一方で、友達と雑談する時には吃音が多く出てしまう場合があります。また、その逆の場合もあります。

 園や学校では、吃音の症状が殆どみられないのに、家では症状が強く出ているという場合もあります。

  多くの吃音の人は、独り言をいう、動物や赤ちゃん等しゃべらない相手に対して話しかける、歌を歌う、本読みなど他の人と一緒に読む(一斉読み)等の条件下では吃音はほとんど出ません。

 

吃音の出やすい言葉と、出にくい言葉があるのも特徴です

 吃音の症状が出ることを避けるために、吃音が出にくい言葉に言い換えて遠回しな表現を用いたり(「日曜日」と言う代わりに「3日後に」)等の言葉を言い替える工夫をするようになります。

 工夫が全て悪いわけではありませんが、言いたいことをうまく伝えられない経験を積みかさねてしまう事にもつながる可能性もあります。

 

心理的な問題だけが突出して大きくなっている場合があります

 特に学年が上がってくると、本人が話し方の工夫や話す場面を避けることにより、吃音の症状は目立たなくなっていますが「言いたいことが言えなかった」等の思いをため込んでしまう事があります。

 先生や周囲の生徒が話し方が気になる、気にならないにかかわらず、本人の困り感に寄り添っていただきたいと思います。


吃音以外にも気になることがあるとき

行動面や学習面も気になる  

 吃音の子どもの中にも、吃音だけでなく行動面や学習面が気になる子どもや既に支援や配慮をされている子どももいるかと思います。

 吃音を持つ子どもの中にも、話し方だけでなく行動やコミュニケーションでも気になる子どももいます。

 さらに、併存する障害や疾患に合わせた支援や配慮も必要になります。

発音の誤りがある

 また、吃音の子どもの中の多くには発音の問題(構音障害)がある子どもも多くいます。

 吃音であっても、構音障害は訓練することでほとんどが正しく発音できるようになります。

 ただ、自分の発音に向きあう事が求められる構音訓練を行う事で吃音の症状が強くなることが時にあります。

 その為、子どもに負担がかかっていないかを見極めながら慎重に構音訓練を進めていくことが必要になります。

 吃音だけでなく、ことばの事で子どもが悩んでいる様子であれば、どのように対応するかご本人、保護者の方と話をしていただきたいと思います。

 そして、通級指導教室の先生や専門機関(言語聴覚士等)と連携の中で、どのような支援が必要か相談していただければと思います。

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参考書籍: 菊池良和, 吃音のことがよくわかる本, 講談社, 2015年

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吃音②吃音の問題

今回は、吃音の原因と吃音による問題についてです。

吃音の発症原因

 結論から書くと、吃音の発症(発吃)の原因は不明です。

 今のところ「脳の働き方のくせ」と「ことばの急速な発達を促す環境」などが複数からみあっていることが分かってきています。

 

古くに言われていた

・左手矯正をした為

・幼児期に弟妹ができたための愛情不足

・激しく怒りすぎてしまったこと等虐待の兆候

・引っ越しが多く、環境が落ち着かない

・性格の問題

・運動発達の問題

・言葉が流暢でない事を本人に意識させたから

・吃音の真似をしたから

・身近に吃音の人がいたからうつった

・親の接し方やストレス

これらは、研究によって否定されています。


「吃音」の問題

 
吃音の問題には、大きく「言葉の問題」と「話し手の心理的な問題」、「周囲の誤解や偏見、過剰な反応による問題」 と分けられます。

言葉の問題」とは、前述した言葉の繰り返し、引き伸ばし、難発等のいわゆる「どもる」話し方の問題。

 

話し手の心理的な問題」とは、吃音によって、話す前に「うまく話せなかったらどうしよう」と不安になったり、吃音の症状が出たことで、落ち込んでしまったりする等の問題。

 
周囲の誤解や偏見、過剰な反応による問題」とは、吃音の話し方を「へん」、「おかしい」ものとしてからかいやいじめの対象としたり、「どもりは頭が悪い」「どもりはうつる」など科学的な根拠のないことをもとに吃音に対応したり、「ふざけている」「滑らかに話す努力をしていない」と本人の対応不足だと責めたりすること等の問題。

大きく分けて、これら3つを軸に吃音の問題の大きさをとらえていきます。

吃音の症状を根本的に治療することは難しくても、吃音による問題を軽減していくことは可能だと考えられます。

問題の大きさを3軸でとらえる

         菊池良和(2015)吃音のことがよくわかる本 講談社まず聞き手が、内容に注目して話をするようにする。

話し手は、吃音が出ても、内容を評価されることで話す意欲をなくさないでいられる。

聞き手が吃音でも大丈夫という姿勢で向き合いつづけていることで話す意欲を失わず、積極的に話しをすることができ、吃音の症状も軽減すると期待できます。また、話し方が変わらなくても悩みを減らすことは出来ます。

努力や訓練で吃音の症状はゼロにはなりません。聞き手の反応を改善することが、もっとも大切になります。

 

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参考書籍: 菊池良和, 吃音のことがよくわかる本, 講談社, 2015年

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吃音①基本的な症状

 今回は、吃音の基本的な症状とことばの事で困りごとを抱えているかもしれないお子さんのサインをご紹介します。

 

「吃音」とは

 

 吃音には、主に3つの症状により、滑らかに話せなくなっている状態を言います。

 

・繰り返し(=ことばの一部をくりかえす)

例:「ぼ、ぼ、ぼく」

          

・引き伸ばし(=ことばを引き伸ばす)

例:「きーーーのうね」

         

・難発(=なかなかことばがでてこない)

例:「・・・・・・りがとう」

 

 この3つ以外にも

 リズムをとるように体を動かしたり、叩いたりするなどの随伴症状があります。

 また、吃音の症状には波があります。吃音の波の周期は個人差が大きいのですが、1ヶ月から数ヶ月単位で良い時期と悪い時期を繰り返すことが多いようです。


ことばに困り感のあるサイン

話す時にリズムをとるように手を振る、足踏みする

話す時に顔をゆがめる、力(りき)

話そうとしてやめてしまう

授業で発表しようとしない

発表しようとして、自分から手を挙げたのに話そうとしない

友達と話をしようとしない

休み時間もひとりでいることが多い

音読などをあてられても、固まってしまう

いつも緊張している様子

ふざけて不自然な言葉をつかう

はなしているときにことばを「かむ」

「あのー」「えっとー」という言葉をいれながら話す

突然大きな声で話す

常にそわそわしている


    これらに似た様子が頻繁に見られる場合は吃音などの「ことばに困り感」をかかえているかもしれません。

 悩み事を知られたくなく、相談するように促しても打ち明けられない子どももいるかと思います。

 子ども達が、ことばの困り事を打ち明けられるように、ご家族の次に先生方が近くで寄り添っていただきたいと思います。

 

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参考書籍: 菊池良和, 吃音のことがよくわかる本, 講談社, 2015年

     吃音のことがよくわかる本

関連記事

吃音のお話① 吃音のお話② 吃音の話③ お話しができる環境づくり

吃音は本人に意識させない方がいい?

『吃音は本人に意識させない方がいい』は間違い

 古くから吃音は長い間「本人に意識させない方がいい」と提唱されてきましたが今はそれは間違っているとされています。

 しかし、日本では今もその考えは根強く正しい認識がアップデートしきれていないのが現状です。

 子どもに「吃音を意識させない」ことを重視しすぎた対応をしていると、子どもが自分の話し方に対し「なんで、言葉がつっかえるの?」というような素朴な疑問に対して身近な大人が向き合ってあげられない場面が生じてしまう恐れがあります。

 むしろ、子どもが自分の話しにくさに対して「この話はしたらいけないのかな」と、相談しにくい雰囲気を作ってしまうかもしれません。

 吃音についての話をタブー化せず、吃音についてフランクに話せる雰囲気を作りをするためにも、子どもの疑問に答える準備をしておきたいですね。(吃音の話③ お話しができる環境づくり

疑問に対しての答え方の例

 「吃音と言われる話し方で、子どもでも大人でもそういう話し方の人がいるよ」

 「吃音という話し方で、クセみたいなものだよ。悪い事じゃないよ」……等など

「からかい・いじめ」を予防するには、吃音を知ってもらう

 吃音のある子どもの多くは6歳から7歳ごろに半数以上が園や学校生活で発表友達との会話などで吃音を意識することが多いとされています。それに対し保護者のほとんどは、2~3歳ごろ吃音が出ている事に、本人より先に気づいています。

 吃音は意識させても悪化には繋がりません。

 専門家(医師、言語聴覚士、通級指導教諭等)や保護者は、早期に園・学校に吃音に伴うからかいや、いじめ(笑う、真似る)などがないかを確認し、吃音は「わざとではないこと」「自分の努力や意識でコントロールできないこと」を周囲に知ってもらう事が大切です。

 その上で子ども達にもそのつど「わらったり、真似たりすることは良くない」ことを伝えていくようにしましょう。


参考論文

菊池 良和ほか 吃音を意識した年齢に関する検討 音声言語医学56 巻 (2015) 4 号

関連記事

子どもが友達の吃音に気付いたら

吃音の話③ お話しができる環境づくり

面接試験の合理的配慮を受ける

吃音だけでなく様々理由によって配慮が必要な場合、筆記試験や面接で合理的配慮を申請することが出来ます。

配慮の内容は、障がいや疾病によってそれぞれです。

中学・高校入試の面接で合理的配慮を受けたい

岡山県立高校の入試でも多くの学校で面接があります。

県立中学校の入試では、4校とも面接がありますが、事前の相談によって合理的配慮を受けることが可能です。

吃音に対しての面接時の合理的配慮の例は以下が挙げられます。

・ことばが詰まっても話しの続きを促さない

・大きな声を促さない

・面接時間の延長

・筆記での対応

配慮事項については

適正検査及び面接を受験するに当たり、病気や傷害等等の事情により時別な配慮を必要とする場合、保護者は、事前に志願校と十分に相談する。

とあります。

また、文部科学省では

(高校入試を実施側に求められる対応)

〇医師の診断書の発行に時間を要する場合等もあることから、申請方法等の明確化を図ること。⇒ 申請方法(申請時期、申請先、必要な書類など)、決定時期、再申請の方法など

〇合理的配慮は一人一人の障害の状態や教育的ニーズに応じて決定されるものであることから、申請を不許可とする場合は、その理由を具体的に説明する必要があること。

〇受験上の配慮事項を決定するにあたっては、中学校において行われている配慮や支援の内容が参考になることから、中学校と高等学校が連携を図るなどして、積極的に情報共有を行うこと。

と合理的配慮を受ける際に医師の診断書を発行するには時間がかかる為、どのような書類を準備すればいいのか、入試を実施する高校側が明確にすることを求めています。

どのような書類が必要か、まずは在学校を通して中学校、高校に問い合わせてみてください。

大学入試の面接で、合理的配慮を受けるには

大学受験においての合理的配慮の申請は、各大学のホームページに申請方法が記載されています。

例えば倉敷市立短期大学では、募集要項の令和5年度学生募集要項 38ページに合理的配慮について記載されています。大学の多くは出願前に早めに相談することが求められていますので、志望する大学に予め何が必要なのかも含めて相談の連絡をすることをお勧めします。

各種検定について

受験する検定によっても配慮が受けられる場合があります。

まず、どのような書類が必要なのか?どのように申請するのか?各検定の協会のホームページで確認してみましょう。

言語聴能訓練室は、医療機関ではなく医師もいないため、診断書等は書けませんが、かかりつけの先生や学校の先生に、吃音について「どのように説明したらいいのかな?」など、お悩みの場合にはご相談ください。


関連コンテンツ:小・中・高校生のみなさまへ

   参考書籍:菊池良和著,吃音の合理的配慮,学苑社,2019

 参考・引用HP:学苑社HP

         英検:障がい等のある方へ受験上の配慮

        10話: 国立大学医学科を合格した吃音受験生への配慮の診断書

        合理的配慮の提供

子どもが友達の吃音に気付いたら

吃音があるといじめられる?

 吃音があることが周囲に気付かれると、子どもがいじめられてしまうのでは?とご相談を受けることがります。

 事実、吃音でからかいやいじめをうけて深く傷ついた方は沢山いらっしゃいます。 そういった悲しいいじめが今後起きないようにするためには、まず大人が正しい知識を持ち「からかいやいじめを許さない」ことです。そして周囲の子ども達にも正しく吃音について伝えていく事が重要です。(吃音のお話①

子どもが友達の吃音に気付いたら

 吃音の話し方は、わざとではないので「真似しない」「笑わない話し終えるのを待つ」の指導を徹底しましょう。

 6歳で、ほぼ100%の子ども達が相手の言葉がつっかえることに気付いている事がわかっています。

 また別の研究では、吃音の話し方を見た際に、子ども達はつっかえた話し方に気付いてどう反応したらいいか分らず「笑ったり」「戸惑う仕草」をしたそうです。

 子ども達が早くに吃音の話し方を聞き、正しい知識や接し方を学ぶことで差別や偏見を持たず成長することにつながります。

なんで〇〇君は「おおおおはよう」ってなるの?

 子どもに「〇〇くんって“おおおおはよう”っていうんだよ 😮 」と素朴な疑問を投げかけられた際は、周囲の大人はしっかりその疑問に耳を傾けて話を聞いてあげてください。

 疑問を口にしたことで「そういう事を言わないよ」と注意する必要はありません。注意や話を逸らすことで「“おおおおはよう”ってなるのは良くないことなんだな 🙁 」と感じさせてしまう恐れがあります。

 答え方の例

  「そうなんだね、時々“おおおおはよう”ってなるんだね」

  「“おおおおはよう”ってなるお友達もいるんだよ」

  「なんでなるかは分からないけど、わざとじゃないよ」

  「言いたいことが言えるまで待ってあげてね」……など

 「そういう話し方もある。」「わざとではない。」「悪い事やおかしい事ではない。」というメッセージを伝えられるといいですね。


関連記事

吃音④子ども達が受けたい支援(指導者向け)

参考論文

伊藤智彦 構音,流暢性に対するメタ言語知識の発達 音声言語医学36(1995)

吃音⑤具体的な支援(指導者向け)

 こんにちは、言語聴覚士Sです。

 今日は、授業中にできる具体的な基本の対応についてお話したいとい思います。

 以下にご紹介する事は、もうすでに先生方がご指導の中で実践されている事が含まれているかと思いますが改めて確認していただければと思います。

 

話し方のアドバイスをしない

 子どもが言いかけた言葉を先取りして続きを代わりに言う事は必要ありません。最後まで自分の言葉で話しきることが大切です。

 「ゆっくり」「おちついて」等のアドバイスも効果がないとされています。

 また、最後まで話せた時には話の内容に注目し自分の思いが伝わったことを経験できるようにして頂きたいと思います。

 吃音の子どもは自分が「吃音が出ずに話せたか」と言う事に注目しがちです。発言が出来た時は「スムーズに話せたね」「詰まらなかったね」等の言葉への評価ではなく「この発表は〇〇がよかった」等、内容についての評価をして下さい。

からかいは許さない

 子供たちの中で吃音や吃音に伴う動作等へのからかいや嘲笑は、他のからかいや嘲笑と同じように対応していただきたいと思います。 

 吃音についての知識や情報がない子ども達にも「わざとそういう話し方をしているのではないこと」、「自分の努力ではどうしようもないこと」など、を丁寧に説明していただきたいと思います。

斉読をする

 「吃音の話(指導者向け)③学齢期の吃音の特徴」でもお話しましたが、本読みなど他の人と一緒に読む(一斉読み)等の条件下では吃音はほとんど出ないのが特徴です。

 授業での音読は、クラス一斉の音読にしたり二人組の音読にしたりするなどの形をとってみると効果的です。

 5回のシリーズで更新させていただいた吃音の話(指導者向け)は、今回で終了です。今回の記事が吃音だけでなくことばに困り感のある子ども達に適切な支援や配慮が行き届くよう目配りされている先生方の目に留まったなら幸いです。

【おすすめ吃音関連サイト】以下リンクは外部サイトに移動します。

吃音ラボ

全国言友会(吃音(きつおん)のある人のセルフヘルプグループ)

参考書籍: 菊池良和, 吃音のことがよくわかる本, 講談社, 2015年

     吃音のことがよくわかる本