発音の話④口呼吸

発音の相談に来たお子さんで安静時に口がぽかんと開いている場合、

鼻づまり、不正咬合に関してお医者さんにまずは相談をするようお願いしています。

 

口呼吸の原因の1つには

口周りの筋力が未発達であることがあげられます。

表情で感情がわかるようになる、離乳食が完了する頃までは口が開いているのは発達上のことで、個人差もあります。

 

口呼吸かどうかをチェックする方法について 

・ポカンと口をあけている

・歯並びが悪い

・発音が不明瞭

・朝、のどが痛い

・口内炎ができやすい

・あごの下にシワがよる

・くちびるがカサカサで乾燥する

・風邪をひきやすい

・鼻がつまりやすい

3つ以上チェックがあったら赤信号です。

高松市歯科医師会もぐもぐだより vol35 を参考にしてください。

 

 

鼻呼吸のチェックについては

・こどもの鼻の下に指をあてる。息が感じられるか     

  はい/いいえ

・こどもの鼻の下に薄い鏡かスマホ(黒い画面で行う)を軽くあて画面が曇るか 

  はい/いいえ

いずれも こどもの口が閉じた状態で「はい」であれば 

鼻呼吸ができています。

 

発音練習の話に戻りますが、

舌だけを口唇より前に出す、上口唇をなめるなどができない場合

舌や口の動きの巧緻性を高める練習をしていきます。

食事の場面や遊びの場面で口や口周りの筋肉をupさせることは可能です。

 

急にできることではありませんので、ゆっくり焦らず やってみてください。 

はつおんあそび④口唇の筋力up

はつおんあそび③お口ジャンケン


参考HP 公益社団法人 高松市歯科医師会 https://www.418takamatu.com/mogumogudayori/

②学校で発音について指摘されたら~言語聴能訓練室でチェックすること~

言語聴能訓練室に相談に来てもらうと、次のことを確認します。

  1. 発音のチェック

  2. 言葉の発達

  3. 医療機関で診察が必要かどうか

  4. 本人が練習をしたいと思っているかどうか

 発音に誤りがある場合でも、次のようなことがあれば、練習を始めるタイミングではないと判断することがあります。

  • 本人が練習を望んでいない場合

  • 医療機関で中耳炎や口や鼻などに問題がないかチェックが必要と判断された場合

  • 言葉の発達に偏りがあると疑われる場合 など

 いろいろ確認した上で、発音の練習を開始するのが適切なタイミングかどうかを判断します。また、中耳炎などの治療を優先することもあります。

発音の練習は、それぞれのお子さんに合ったタイミングで始めることが大切です。

しっかりと相談しながら進めていきます。


関連記事 ①学校で発音について指摘されたら~ご家庭で話してみること~

①学校で発音について指摘されたら~ご家庭で話してみること~

  学校で、発音の誤りについて指摘された、というご相談が増えています。

 以前別の記事でも書かせていただいたように、発音の練習は早く始めた方が良いというものではありません。

 特に小学生以降は、自分の意思をしっかり持てるようになってきますので、ご本人のやる気はとても大切です。

 保護者の方の中には「実はずっと気になっていた」という方や、「指摘されて初めて気づいた」という方もおられると思います。

 それでも、発音の誤りについてお子さんと改めて話をするという機会がなかった場合に「具体的にどんなことを話せばいいの?」と思われると思います。

 学校で発音について指摘された場合、まずご家庭でも以下の事についてお話してみてください。

  1. 本人は発音の誤りを気にしているか?

    気づいていると言えなくても

    • 小声で話す

    • 話すのを避ける

    • 聞き返すと黙ることがある

  2. 本人は発音の誤りで困っていることがあるか?

    具体的な場面だと

    • 本読みでうまく読めないことがある

    • 友達と話をしていてよく聞き返される

 発音の練習は、ご本人のモチベーションがないと続きません。また、練習で言えるようになっても、発音の誤りに気付いていないと普段の生活の中でも正しい発音ができるようになりません。

 ご家庭で話し合った結果、お子さんご本人が 1 や 2 のようなことをお話してくれるようであれば、発音の練習について相談する良いタイミングと言えます。

☆発音の発達を促す関わり

今日は、発音の発達を促すための関わりについていくつかポイントをお話したいと思います。

 

1)大人が「ゆっくり、はっきり聞きやすい発音」で話しましょう。

 小さな子どもはことばを聞く力、聞き取る力はまだとても未熟です。大人でも英語で、早口でペラペラしゃべりかけられるとお手上げだけど、ゆっくり話してくれれば分かる状態に似ています。

 日本語は、「子音と母音」で成り立っています。どういう音の組み合わせで成り立っているのかを際立たせるために、大きく口をあけて「はっきり、ゆっくり」話すことで子どもは聞き取りやすくなります。

2)「いってごらん」と試したり「ちがうでしょ。か・め」等と言い直しをさせないようにしましょう。

 「発音のはっきりしない子」「発音を間違える子」は、例えば”かめ”を「ため」と言う子どもも子ども本人は「かめ」と言っているつもりで、まだ自分が正しく言えていないことに気づかない子も多いです。その為に、何度も「”かめ”といってごらん」と言われると😧「かめって言ってるのに!」と混乱してしまいます。

また、「ちがうでしょ」と言われると 🤔「ため(🐢)じゃないの?」と、また混乱してしまいます。

3)間違った発音をしたら、正しい発音をさりげなくしめしましょう。

 🐢を「ため」と子どもが言う時は、何を伝えたいのかを汲み取り、「そうだねかめだね」と、「ゆっくり、はっきり」話して聞かせてあげてみましょう。

 

 

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☆発音のお話

今日は発音の発達のお話です。

言葉がはなせるようになると、発音が気になるようになりますよね。

発音の発達は個人差がありますが、いくつか特徴があります。

 

 

発音発達の特徴 

①「サ」「ザ」行、「シャ」行、「ラ」行の音、「ツ」はおおむね4歳以降に完成し、それ以外の子音は4歳ごろまでに完成します。

 たとえば、”さかな”が「しゃかな」「ちゃかな」になる等は、発達の過程でよくみられる誤りですので、お口の動きが上手になってくると「さかな」と徐々に言えるようになることがあります。

②それぞれの音が出始めて、完成するまでの間には、言えたり、言えなかったりという状態をいったりきたりします。ことばの音の並びによっていいにくかったり、言いやすかったりします。

たとえば「さかな」は言えるけど”おかあさん”が「おかあしゃん」となる等、音の並びやことばの長さで言えない事もあります。

③それぞれの音の出現時期・完成時期については個人差が大きいです。発音も「ことばの発達」の一部ですのではっきり言えなくてもお子さんとことばでやりとりをすることがとても大切です。

 

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食べる①

 

 

 

 

 

 私たち、言語聴覚士は「話すこと」や「聞くこと」などのコミュニケーションに障害を持った人や「食べること」に障害を持った人に対して、検査や回復するためのリハビリテーションを一緒にしていくことを仕事としています。

 ことばの育ちには、口や舌、唇を動かすことが密接に結びついています。以前「発音のお話③」や「発音を育てる(食べる)」でも書いていますので是非読んでみてくださいね。

 正しい発音をする為に必要なお口の中を刺激したり、舌を思い通りに動かす練習を毎日できる場面。それは「食事」です。
 食事で、お口を動かすたくさんの経験を子どもにさせる為に、赤ちゃんが食べる準備の為にしている事やお口の中の環境をより良く保つためにできる事。また、食べる事の成長を見ていくポイントを次回から書いていきたいと思います。

発音をそだてる(食べる)

こんにちは

もうすぐクリスマスですね!

 

 

 

以前 発音のお話発音を育てる生活動作と遊び でもご紹介した正しく発音する為に、必要なお口の中の感覚を刺激したり、舌を思い通りに動かす練習を楽しく行う為に「噛むこと」「なめること」とご紹介しました。

それが、一度にできることと言えば食事です!

そこで、凍らせたフルーツをおやつにしてみるのはいかがでしょうか?

一口大に切ったバナナやイチゴをバットやタッパに並べて凍らせてから美味しく食べる。

それだけです。(小さなお子さんは、生のフルーツを冷やすだけ)

凍ったフルーツを右の頬、左の頬に移動してみましょう。いつもより硬いフルーツを噛んだり、お口から出てこないように、口をしっかり閉じたりすることで発音に必要な部分をしっかり動かすことが出来ます。

そして、冷たいことで口のどこにあるかをしっかり意識することが出来ます。

おいしくお口の運動をしてみてください。

丸飲みや窒息などの危険があるので食べている間は目を離さず安全に気を付けて美味しく食べてくださいね。

ブドウなど、小さいものでも丸くてつるんとしたものは誤って丸飲みしやすいので必ず半分に切ってから凍らせましょう。

ことばの最初や最後だけしか言わない

 「りんご」を「ご」と言うなど

 単語の名前の最初や最後だけしか言わない。というご相談を受けることがあります。

 「りんご」と伝えたいのだけれどうまく言えず「ご」と発音したり、「ひこうき」を「こーき」と発音することを専門用語で「ワードパーシャル」と言います。

 こういう、単語の一部だけしか言わない時期は言葉の出始めから2歳代くらいまでは、比較的よく見られます。文も話しているようだけど一部だけしかはっきり聞き取れず 🙁 (何か伝えたいんだろうけど、よくわからないな)ともどかしい経験をされている保護者の方は多いのではないでしょうか?

 発音の未熟さでもありますが、音を覚えておくことや複数の音を頭の中で並べる事の未熟さが原因であることもあります。

 こんな時思わず一文字ずつ復唱させて

   :-) 大人「り」→子「り」

   🙂 大人「ん」→子「ん」

   🙂 大人「ご」→子「ご」

   🙂 大人「りんご」→子「ご」

 と言わせたくなってしまうものですが”りんご”だと言えない。という事はよくあります。

 でも、子どもは“りんご”と言っているつもりなので言いたい気持ちを汲み取って「そう、り ん ご」と正しい言葉をゆっくり、聞き取りやすい発音で復唱してあげましょう。

 何度も聞くことで記憶が強化され音を組み立てる力にも繋がります。

 文字に興味のある子なら、文字も一緒に示してあげてもいいでしょう。

 

 3歳を過ぎても言葉の一部を言うことの方が多く、正しく言える言葉が増えないような時は、専門家と丁寧に様子を見守りながら成長を観察することが必要な事があります。また、ことばを聞く練習やことばを組み立てる練習が必要なことがありますので小児科医や保健師さん、専門家(言語聴覚士など)に相談してみてください。


参考文献

言語委員会言語発達遅滞小委員会(1998)〈S-S法 〉言語発達遅滞検査 を用いた健常幼児の言語能力調査

機能性構音障害

 言語聴能訓練室の発音の相談で最も多いのが、このタイプです。

 「サ行が言えない」「発音がはっきりしない」「ことばが遅い」等で相談に来られることが多いです。 

 今まで「発音のお話」で書かせていただいている記事は、この機能性構音障害について書かせていただいています。

 大体は、発音の発達過程でみられる子音の誤りであることが多く、経過を観察する中で自然と正しい発音を獲得することが可能な時もありますが、そのまま癖になってしまうこともあります。

 中には発音の発達の過程では普通は出現しない誤りをする子どももいます。その場合は自然に正しい音を獲得できる場合は少なく、練習が必要になることが殆どです。

 機能性構音障害の誤りは、構音訓練で正しい音を獲得できることが多いです。

 誤り方によっては、聞き手が全く違和感を感じない状態になるには時間がかかることもあります。

 構音訓練をすることで、学校の本読みや電話では気を付けて正しく発音することが出来るけれど、リラックスしてご家族と話している時は誤りがあるなど、その子によって普段から気を付けられる度合いが違います。発音の誤りに自分で気づき、目的の音を数回の言い直しで正しく言えるようなら問題ありません。

 以前も「発音(滑舌)様子をみましょうと言われたら」で書かせていただいたように、機能性構音障害は早期に構音訓練を行う方が良いとは限りません。

 「発音のお話②大人が発音の見本に発音のお話③発音を育てる生活動作と遊びを参考に、ご家庭で訓練が開始できる時期まで様子をみてもらえたらと思います。

 機能性構音障害だと思っていても、滑舌や発音の誤りにはごく稀ですが器質性の問題が隠れていることもあります。

 ご家族が「違和感があるな」「これは様子をみてもいいのかな?」と不安な際や相談機関で受診を勧められた際は医師や歯科医師に相談するようにしましょう。

関連記事

構音障害(発音の障害)器質性構音障害運動性構音障害発音のお話①発音の発達

参考文献

日本言語聴覚士協会,言語聴覚療法臨床マニュアル,協同医学書出版社,1992

運動性構音障害

 運動性構音障害とは、いわゆる脳卒中やALS、パーキンソン病、脳性マヒなど、発音に関わる動きをコントロールする神経の病気が原因で発音が思い通りにできない状態です。

「麻痺性構音障害」や「ディサースリア」ともいいます。

「ろれつが回らない」という状態が多く、話がはっきりしない、鼻声が酷い等の訴えが多数です。話すリズム・速さ・アクセント・イントネーションの異常を併発することもあります。

 原因となる疾患がある為、主治医からの依頼を受けて言語聴覚士が検査、評価を行います。

 訓練で改善は見込めますが、疾患による運動障害そのものを改善することには限界があります。発症前と同程度に自然な状態に戻ることは容易ではなく個人差がすごく大きいです。

 どのようなリハビリをどのように進めていくかは主治医である医師としっかり相談しながら行うことが大切です。

 ある日突然に「ろれつが回らない」「言葉がうまく話せない」という症状が出た際にはただちに病院受診をしましょう。


参考文献

日本言語聴覚士協会,言語聴覚療法臨床マニュアル,協同医学書出版社,1992