11月23日はくらしき健康福祉プラザまつりでした。
今年も沢山の方が言語聴能訓練室のパネル展示に来てくださいました。
嚥下体操を一緒にしてくださったり、言葉の発達についての質問をしてくださったりしました。
興味をもってじっくり見ていただき、ありがとうございました。
ぜひ来年もご来場ください!
受験シーズン到来ですね。
今回は高校入試を控えた受験生の皆さんとご家族への情報提供です。
岡山県教育委員会が、令和5年10月に発行した
「岡山県立高等学校へ入学を希望する皆さんへ」と言うパンフレット
表紙には大きな文字で「県立へいこう」と書かれていて、既にお手元にある方もいらっしゃると思います。
パンフレット13ページ(PDFデータだと15枚目)のQ&Aに特別な配慮の申請について触れられています。
実施された配慮の一覧に「検査時間の延長」「面接の順番及び実施形態の配慮」「ルビ振り」「ICT等の支援機器の活用」などが挙げられており
発達障害や吃音(その他の障害や病気)などで、受験の際に合理的配慮を求めたいけど、どこに相談したらいいのか不安だった方、学校で先生に相談してみましょう。
どんな合理的配慮がいいのかも、パンフレットを見ながら先生と相談できるといいと思います。
ご紹介したのは県立高校の配慮実施例ですが、私立高校に関しても同様に学校の先生に相談されるといいと思います。
吃音はお笑いで言う”噛む”ではありません。
言葉を言い間違えたり、つっかえたりするのを「カム」と言ったりして
テレビのバラエティー番組では、ツッコミの対象になったりすることもありますよね。
でも、それは「話術で稼いでいる」テレビの中の話。
一般人である私たちが、言葉を全くつっかえたり間違ったりせずに話すのは至難の業です。
話したいことがあるのに、言葉がつっかえたりするアクシデントにいちいちツッコミを入れられたり、笑われたりするのは気分がいいものではありません。
吃音の話し方の人にとって、言葉を繰り返したり、つっかえたりする話し方がその人にとって自然な話し方です。それにも関わらず、逐一話し方に反応されていては、次に何を話したいのかを考えることもままなりません。
常に(スムーズに話せるのか、嫌な思いをするのではないか)という心配と不安抱えて日常を過ごし、そんな不安から、吃音に気付かれないように努力している人もいます。
もしも、あなたの友達や知り合いに吃音の人がいたら気持ちを和ませようという心づかいからの真似やツッコミは不要です。
代わりに次の事に気を付けてあげてください。
・言葉を繰り返したり、つっかえたりしても笑わない
・話の内容を聞いて、内容にリアクションする。
・話が止まっても「それから?」と続きを促す程度の相槌で、話し終えるのを待つ。
・「おちついて」「あせらなくていい」等のアドバイスをしない。
・イジル人がいたら「わざとじゃない。イジルなよ」とイジラないように伝える。
あなたの心づかいが、誰かの気持ちをきっと和ませてくれるはずなので
どうかよろしくお願いします。
参考書籍 菊池良和,吃音の合理的配慮,学苑社,2019
10月1日に開催された倉敷市民スポーツフェスティバルに「もぐらたたき」で参加しました。
「ことば」の健康コーナーのパネルも沢山の方に見て頂きました。
お立ち寄り頂いた方、ありがとうございます。
次は、10月15日いきいきふれあいフェスティバル(倉敷市水島緑地福田公園)に参加します。
見え方・ことばのコーナーで展示をします。
良かったら遊びに来てくださいね
「人見知り、場所見知り」の記事では、人見知り場所見知りする子どもたちに身近な大人は子どもにとっての安心できる場所「安全の基地」になりましょう、と書かせていただきました。
今回は具体的にどのように「安全の基地」になるか考えてみたいと思います。
特に、人見知りが強い子どもには新しい刺激を怖くないと思うために、探索したり静かに落ち着いて遊んだりする時間が人見知りしない子より多く必要になってきます。
「遊んでごらん」「こわくないから触ってごらん」「ご挨拶して」と促されるよりも
ただその場に慣れるのをいっしょに待ってくれる人が必要なようです。
最初は、抱っこされてばかりかもしれません。
でも、お父さんお母さんは子ども自身が一人で静かに少しずつ遊ぶようになれるのを待ちましょう。
子どもが見ていることに対して時々落ち着いた声で「~してるね」と周囲の様子を伝えるように声掛けしてあげてもいいでしょう。
徐々に、その場にある物やほかの子が遊んでいるものに触ってみたくなって指差ししたり、欲しがったりするようになってきても最初はどうやって遊べばいいかわからない子もいます。
おもちゃを持っているだけだったりすぐに離してしまうようでしたら、お父さんお母さんがおもちゃで楽しそうに遊んで見せ、遊び方を示してあげることもいいでしょう。
そうやって身近な大人が寄り添うことで徐々に一人で遊ぶことができるようになります。
子どもは安心できて、初めて色々なことに興味をもつことができます。
遊びを介して友達とのかかわりができるようになってくる子もいます。
「かして」「ありがとう」「ごめんね」等最初は言えない子には「『ありがとう』といいなさい」といいすぎるより、「おもちゃの貸し借り①」でもあるように、大人が代弁して気持ちの伝え方を示してあげるのも大切です。
ドキドキしてもお母さんお父さんという「安全の基地」にすぐに避難できるから、遊ぶ範囲を徐々に広げていくことができます。
安心して遊ぶことができることで、人とコミュニケーションできる余裕がでてきて、徐々に先生に挨拶することやお友達と一緒に遊ぶことが増えてきます。
参考文献
NHK出版編集(2010)『ことばの育み方』中川信子監修, NHK出版.
藤岡久美子(2013)「友達と遊ばない子どもの発達—幼児期児童期の引っ込み思案・社会性研究の動向」, 山形大学紀要(教育科学第15巻4号別冊)pp.309-323
知らない人や場所に戸惑って嫌がったり、泣き出したりする状態を人見知り、場所見知りといいます。
泣いたりしなくても、ただジーっとしていたり、ただ歩き回って終わってしまうことが戸惑いの表現の子どももいます。
お父さん、お母さんからすれば、ずっと抱っこされて離れない。一人で遊んでばかりでお友達が近づくと離れてしまう。という様子があると、お友達や先生と一緒に遊んでコミュニケーションの機会を作りたいと思ってお出かけしてきたのに…と思うこともあると思います。
人見知りや場所見知りの理由は、もともとの性格だけでなくいろいろな理由があります。
2歳ごろの「人見知り」や「場所見知り」について調べてみると
2歳児の人見知りは、
• 心が育ってきた
• 記憶力が上がってきた
• 身体機能が発達してきた
この3つを示すサインと言えます。貼り付け元 <https://epark.jp/kosodate/enjoylife/k-2year-old-shy_89254/>
と書かれています。
赤ちゃんの頃の人見知りは「ママ(笑う)」「ママじゃない!(泣く)」の状態だったのに対して、
見たことない場所や人に接すると
「なんだろう?」
「こわい?」
「よく見てみよう」
「怖くないかも」
「たのしい!」
と、複雑になってきています。
記憶も、目に見えなくなったら忘れていた過去の出来事も思い出してお話するようになって、初めて会った人とそうでない人も分かるようになってきます。
体も自分で歩いたりするだけでなく、遊具で遊んだり跳ねたりすることができるようになって五感がどんどん育っていきます。
好きな毛布があったり、お花の香りに気づいたりして世界が広がっていきます。
そこで、新しい場所で新しい人たちに囲まれることで受ける刺激を子どもが五感を使って整理する時間が必要です。
刺激が整理できるまでは、明るさや他の子どもたちの声や遊ぶ音、誰かに急に触られることも怖いと感じる子もいるかもしれません。
新しい刺激を怖いと感じている子どもたちが、怖いくないと判断するのにお父さんやお母さんができることは何でしょう?
それは「安全の基地」になることです。
徐々に、その場にある物やほかの子が遊んでいるものに触ってみたくなって指差ししたり、欲しがったりするようになります。
ドキドキしてもお母さんお父さんという「安全の基地」にすぐに避難できるから、遊ぶ範囲を徐々に広げていくことができるようになってきます。
ことばの3要素の🍎話す🍎分かる🍎コミュニケーション意欲についてお話したようにことばの発達にはこの3つがバランスよく育つことが大切です。
コミュニケーション意欲は安心感の中で育っていきます。人見知り、場所見知りが強い子どもには特に急かさず安心できる場所や人を増やしていけるといいですね。
参考文献
NHK出版編集(2010)『ことばの育み方』中川信子監修, NHK出版.
藤岡久美子(2013)「友達と遊ばない子どもの発達—幼児期児童期の引っ込み思案・社会性研究の動向」, 山形大学紀要(教育科学第15巻4号別冊)pp.309-323
学校での生活を安心して過ごすための合理的配慮や基本の対応を知っておくと、先生との相談の場で具体的な話ができると思います。
以下にご紹介する事は、もうすでに実践されている事が含まれているかと思いますが改めて確認していただければと思います。
子どもが言いかけた言葉を先取りして続きを代わりに言う事は必要ありません。最後まで自分の言葉で話しきることが大切です。
「ゆっくり」「おちついて」等のアドバイスも効果がないとされています。
また、最後まで話せた時には話の内容に注目し自分の思いが伝わったことを経験できるようにしてもらうようにしましょう。
吃音の子どもは自分が「吃音が出ずに話せたか」と言う事に注目しがちです。発言が出来た時は「スムーズに話せたね」「詰まらなかったね」等の言葉への評価ではなく「この発表は〇〇がよかった」等、内容について話を聞くよう気を付けてもらうといいでしょう。
子供たちの中で吃音や吃音に伴う動作等へのからかいや嘲笑は、他のからかいや嘲笑と同じように対応していただきたいと思います。
吃音についての知識や情報がない子ども達にも「わざとそういう話し方をしているのではないこと」、「自分の努力ではどうしようもないこと」など、を丁寧に説明して、周囲の理解を深めていくことで、話しやすい環境づくりがをすることができます。
「吃音の話(指導者向け)③学齢期の吃音の特徴」でもお話しましたが、本読みなど他の人と一緒に読む(一斉読み)等の条件下では吃音はほとんど出ないのが特徴です。
授業での音読は、クラス一斉の音読にしたり二人組の音読にしたりするなどの形をとってみると効果的であることを伝え、授業に取り入れてもらうようお願いしてみましょう。
また、本人が特別扱いされているという思いを抱かないよう、クラス全体で取り組んでもらえるように配慮を求めるといいでしょう。
【おすすめ吃音関連サイト】以下リンクは外部サイトに移動します。
全国言友会(吃音(きつおん)のある人のセルフヘルプグループ)
参考書籍: 菊池良和, 吃音のことがよくわかる本, 講談社, 2015年
吃音があるからといって、すべての子どもが同じ支援を望んでいるわけではありません。まずは、どういった支援、配慮を望んでいるのか本人と話し確認することが大切です。
・ことばの先取りをしない
・話し終えるまでゆっくりまつ
特にこの2つは多くの子どもが授業中の支援として望んでいることがわかります。
ことばがつかえて苦しそうだからと助けるつもりが、かえって子どもの話す意欲をそぐこともあります。
聞き手が焦らず待つだけで、救われる子どもも多くいることを知っていただければと思います。
吃音が残っても困らないように
2~4歳の20人に1人。約5%が吃音を発症(発吃)するといわれています。
発吃から3年で、その内男の子なら6割、女の子なら8割の子が自然と吃音が消えていきます。
しかし、2割から4割は吃音が残ります。
どの子が、自然に消えていくのか、長く続くのかは予測がつきません。
しかし、学童期になってもなお吃音が自然に消えていない場合、吃音が長く続くかもしれないことを考慮し普段の授業から支援してもらえるよう、学校の先生とも話ができるといいでしょう。
関連記事 吃音⑤具体的な支援(指導者向け)
【おすすめ吃音関連サイト】以下リンクは外部サイトに移動します。
全国言友会(吃音(きつおん)のある人のセルフヘルプグループ)
参考書籍: 菊池良和, 吃音のことがよくわかる本, 講談社, 2015年
学齢期の吃音の特徴
学齢期の吃音の特徴としては以下のようなものがあります。ただし、個人差がとても大きくすべてが当てはまるわけではありません。
吃音の症状には波があります。吃音の波の周期は、個人差が大きいのですが1ヶ月から数ヶ月単位で良い時期と悪い時期を繰り返すことが多いようです。
例えば、国語の時間の音読場面ではほとんど吃音が出てこない一方で、友達と雑談する時には吃音が多く出てしまう場合があります。また、その逆の場合もあります。
園や学校では、吃音の症状が殆どみられないのに、家では症状が強く出ているという場合もあります。
多くの吃音の人は、独り言をいう、動物や赤ちゃん等しゃべらない相手に対して話しかける、歌を歌う、本読みなど他の人と一緒に読む(一斉読み)等の条件下では吃音はほとんど出ません。
吃音の症状が出ることを避けるために、吃音が出にくい言葉に言い換えて遠回しな表現を用いたり(「日曜日」と言う代わりに「3日後に」)等の言葉を言い替える工夫をするようになります。
工夫が全て悪いわけではありませんが、言いたいことをうまく伝えられない経験を積みかさねてしまう事にもつながる可能性もあります。
特に学年が上がってくると、本人が話し方の工夫や話す場面を避けることにより、吃音の症状は目立たなくなっていますが「言いたいことが言えなかった」等の思いをため込んでしまう事があります。
先生や周囲の生徒が話し方が気になる、気にならないにかかわらず、本人の困り感に寄り添っていただきたいと思います。
吃音以外にも気になることがあるとき
吃音の子どもの中にも、吃音だけでなく行動面や学習面が気になる子どもや既に支援や配慮をされている子どももいるかと思います。
吃音を持つ子どもの中にも、話し方だけでなく行動やコミュニケーションでも気になる子どももいます。
さらに、併存する障害や疾患に合わせた支援や配慮も必要になります。
また、吃音の子どもの中の多くには発音の問題(構音障害)がある子どもも多くいます。
吃音であっても、構音障害は訓練することでほとんどが正しく発音できるようになります。
ただ、自分の発音に向きあう事が求められる構音訓練を行う事で吃音の症状が強くなることが時にあります。
その為、子どもに負担がかかっていないかを見極めながら慎重に構音訓練を進めていくことが必要になります。
吃音だけでなく、ことばの事で子どもが悩んでいる様子であれば、どのように対応するかご本人、保護者の方と話をしていただきたいと思います。
そして、通級指導教室の先生や専門機関(言語聴覚士等)と連携の中で、どのような支援が必要か相談していただければと思います。
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全国言友会(吃音(きつおん)のある人のセルフヘルプグループ)
参考書籍: 菊池良和, 吃音のことがよくわかる本, 講談社, 2015年