ことばの遅い子②

ことばが遅いのでは?と心配な時に言葉の発達を促す言葉かけについて、少しだけ振り返りたいと思います。

まずは、喃語②でも話したように、聞く力が未熟な子どもへお話するときの

4つのコツは「🍎ゆっくり🍎はっきり🍎みじかく🍎くりかえす」です。

言葉が出る前の赤ちゃんだけでなく、言葉が出始める前から出始めて間もない子どもは、聞く力がまだまだ未熟です。4つのコツで言葉への興味を示しやすくなり言葉の獲得につながっていきます。

単語を話すようになった時期から言葉がつながりだした時期の子どもたちに対し、大人が子どもの気持ちに寄り添って、子どもがその時に興味を持っている物の名前やこどもの気持ちを言葉にして聞かせてあげる「トイトーク」を試してみましょう。

・子どもが”持っている”玩具に対して
・動きを表す言葉と組み合わせて声掛けしてみましょう。

「ぶーぶ、のるよ」
「ぶーぶ、はしってるね」
「さんかく、のせたね」
「おうち、つくったね」

児童館などで行っている「ことばのお話」に来てくださった方は、聞いたことがあると思いますが、子どもが興味を何に向けているかに気を付けながら言葉かけをしていくことが大事です。

コミュニケーションを豊かにするために① で取り上げたように2~3歳になると「~したい」気持ちが増え、たくさん要求するようになります。

要求の多い子どもとはやりとりの回数も増えますよね。

日常場面で子どもが要求してきた際に、表現が足らなくても大人は理解できている状況はよくあると思います。

そんな時も、あえて子どもの意図を読みすぎず、言葉での表現にこだわらず、何らかの表現で要求がでるのを待ってあげる状態にしてみましょう。

子どもがどんな反応をするか、観察してみてください。

要求方法は指さしや身振りでもことばでもOK。

大人が待つことで子ども自身が考える状況をつくってあげることができます

大人も一緒におもちゃで遊びながら楽しくコミュニケーションしてみてくださいね。


関連記事

・コミュニケーションを豊かにするために①コミュニケーションを豊かにするために②☆こどもからの「ちょうだい」を引き出そう

参考文献

田中裕美子(2021),ことばが気になる子どもに早期アプローチことばの遅れと言語発達障害(第 15 回 日本小児耳鼻咽喉科学会
シンポジウム1資料),https://www.jstage.jst.go.jp/article/shonijibi/42/1/42_16/_pdf/-char/ja

奥村優子・小林哲生(2019)日本語レイト・トーカーにおける表出語彙のカテゴリ構成の検討,音声言語医学60

田中裕美子編著(2023)ことばの遅れがある子どもレイトトーカーの理解と支援,学苑社

ことばの遅い子①

言葉が遅いことを心配される保護者の中に「今は2歳で、言えることばが10語くらいなので、次は50語でるようになれば」と目標を言われることがあります。

おそらく、「50語出るようになることが目標」というのは、言語発達の表出語彙が50語を上回ると語彙が爆発的に増加していくという言語発達の特徴から言われていることなのかな?と個人的に考えています。

表出語彙が「50語」を超えて、爆発的な語彙増加が起きる時期は、だいたい1歳半くらいの時期になります。

気を付けたいのは、語発達については、2歳で「50語出てたら大丈夫」というように単純ではないことです。

私個人としても「1歳前後で初語」や「2歳で2語文が出る」は一部の指標でしかないことをしっかり理解しておきたいなと感じています。

今回は、『子どもは大人の言うことがよく分かっていて、コミュニケーションをしようとしているけれど、話せる言葉が少ない』『単語は沢山話すけれど言葉をつなげて話すことが少ない』というようなお子さん達についてお話したいと思います。

お子さんの言葉が「遅いな」と感じている時


🤔言葉の数だけでなく、身振り手振りで伝えようとしているかな?

🤔物の名前だけでなく、様子を表す言葉なども言うようになっているかな?

🤔したい事、やってほしいことを沢山表現できているかな?   など…


にも注目してお子さんとのコミュニケーションを楽しめるといいなと思っています。

言葉の遅い子どもたちの追跡調査では、8~9割は5歳で言語発達が定型発達児に追いつくと言われていますが、もちろん語彙数だけで判断しているのではありません。

しかし、言語発達が平均内に入るようになった子ども達でも学齢期以降も障害とまではいかなくてもストーリーを聞いて覚えてたり理解したりする力、言葉を想起する力などの苦手さが続く子が多いようです。

小さなころ「言葉が遅い」と感じていた場合、周りの大人が「言葉が苦手な子」として理解しておくことは、子どもの頑張りや大変さに気づき寄り添うために必要です。

言語発達が平均の範囲内であっても、子どもが苦手感を感じていたり困っていたりするようであれば医師や専門家の助けを借りることも大切です。

見逃されやすい、言葉の発達だけ遅れる子」でも書かせていただいたように、言葉の遅い子ども達の中には、言語発達の遅れが持続する子ども達もいます。

言語発達の遅れが残る子どもたちも4歳頃には3~4語文レベルで話す為、「会話は理解できている」「追いついた」と安心しがちです。

しかし、少なくとも年長までは丁寧に関わりながらの経過観察が必要だと言われています。

子ども達の困りごとが少しでも減るように、医師や園の先生、言語聴覚士と相談しながら成長を見守っていけるといいなと思っています。


田中裕美子(2021),ことばが気になる子どもに早期アプローチことばの遅れと言語発達障害(第 15 回 日本小児耳鼻咽喉科学会
シンポジウム1資料),https://www.jstage.jst.go.jp/article/shonijibi/42/1/42_16/_pdf/-char/ja

奥村優子・小林哲生(2019)日本語レイト・トーカーにおける表出語彙のカテゴリ構成の検討,音声言語医学60

田中裕美子編著(2023)ことばの遅れがある子どもレイトトーカーの理解と支援,学苑社

見逃されやすい、言葉の発達だけ遅れる子

発達に凸凹があるという時、自閉スペクトラム症やADHDが注目されがちですが

聴覚検査、発達検査に加えて質問紙や行動観察などを行ったうえで、社会性、行動面などにも大きな問題がなく、自閉スペクトラム症やADHDでもないけれど言葉の発達のみに遅れがあるタイプのお子さんがいます。

例えば4歳以降言葉を沢山話すようになってきたけれど
・言葉を話していても文法がなんだかおかしい
・言葉の理解が弱く指示がスムーズに入らない
・人に分かるように説明ができない
・単純な発音の誤りだけでなく言葉の言い誤りが多い

という場合に、言語発達に遅れがあることがあります。

2~3歳の時点で言葉の発達がゆっくりな子さんの多くは、4~5歳頃には追いつくことが多いと言われています。

そのため
「理解がいいから心配いらない」
「知的には問題ないからおいつくよ」
「経験不足だから、園に入れば話すようになる」
と問題ないと判断されがちです。

しかし5歳頃になって、話しも沢山するようになり、コミュニケーションも取れているのに年齢相応の言語発達に追いつけていない子が中にはいます。
就学後に言葉についての苦手さが表面化してきたり学習面に困難を抱えるようになったりする子もいて支援が必要な場合もあります。

2~3歳頃で言葉が遅いなと感じている場合は言葉が出るようになっても、少なくとも就学前後までは言語発達の経過を丁寧に観察していくことが必要だと言われていますので、医師や専門職に相談しながら成長を見守っていきましょう。


参考文献

武田篤他(2001)特異的言語発達遅滞の予後決定因子に関する研究,音声言語医学42(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjlp1960/42/4/42_4_311/_pdf/-char/ja) (2024.4アクセス)

福田信二(2014)特異的言語障害研究の現状と課題,特殊教育研究52,https://www.jstage.jst.go.jp/article/tokkyou/52/4/52_317/_pdf(2024.4アクセス)

田中裕美子他(2001)特異的言語障害幼児の言語特徴の解明への試み,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcomdis1983/18/1/18_1_2/_pdf/-char/ja(2024.4アクセス)

田中裕美子編著(2023)ことばの遅れがある子どもレイトトーカーの理解と支援,学苑社

言葉の遅れだけで病院受診は必要?

 幼児健診や発達相談などで言葉の遅れや言葉の不明瞭さについて相談していると病院受診をして相談をした方が良いと勧められることがあります。もし言葉の事で受診を勧められた場合、どのような病院を受診すればいいかその場で尋ねるか、かかりつけの小児科の医師にご相談してみてください。

 おうちでのコミュニケーションは全く困っていないし、集団生活も送れているのに何故?と思われることがあると思います。

・出来ることや分かることに比べて話す言葉が増えない。

・沢山お話することができているけど、たどたどしくて伝わりにくい、言い間違いが多い。

という場合、言葉が遅れていることに気づかれにくい事が多いためです。

 ことばの発達は、生活習慣、身体発育、色々なことへの興味の広がり、食べる力など様々な力がバランスよく伸びていくことで支えられています。土台のどこがアンバランスになっているのかを病院受診で知ることができます。

 また、聴力や発声発語器官に異常がないかを見てもらうことも重要です。

 専門医は、色々な検査や専門職の評価の結果を総合的に診ます。その評価の結果、言葉を伸ばしていくために今は何が必要なのかを判断することができます。

 言葉の発達には個人差が大きい為、結果によっては定期観察を続けるためにまた受診をする必要があるお子さんもいます。

 言語訓練が必要な場合でも、そのお子さんにあった練習やその内容、始めるタイミングなどを、専門医が判断して、今後についての指標を示してくれると思います。

 病院受診の目的は多岐にわたります。保護者の方が、聞きたいこと、不安に思っていることを相談できるチャンスでもありますので、検討してみるのもひとつかもしれません。


参考資料:NHKすくすく子育て 育児ビギナーズブック⑤

「ことばの育み方」 監修 中川信子 NHK出版 編 2010年発行

日本言語聴覚士協会,言語聴覚療法臨床マニュアル,協同医学書出版社,1992