見逃されやすい、言葉の発達だけ遅れる子

発達に凸凹があるという時、自閉スペクトラム症やADHDが注目されがちですが

聴覚検査、発達検査に加えて質問紙や行動観察などを行ったうえで、社会性、行動面などにも大きな問題がなく、自閉スペクトラム症やADHDでもないけれど言葉の発達のみに遅れがあるタイプのお子さんがいます。

例えば4歳以降言葉を沢山話すようになってきたけれど
・言葉を話していても文法がなんだかおかしい
・言葉の理解が弱く指示がスムーズに入らない
・人に分かるように説明ができない
・単純な発音の誤りだけでなく言葉の言い誤りが多い

という場合に、言語発達に遅れがあることがあります。

2~3歳の時点で言葉の発達がゆっくりな子さんの多くは、4~5歳頃には追いつくことが多いと言われています。

そのため
「理解がいいから心配いらない」
「知的には問題ないからおいつくよ」
「経験不足だから、園に入れば話すようになる」
と問題ないと判断されがちです。

しかし5歳頃になって、話しも沢山するようになり、コミュニケーションも取れているのに年齢相応の言語発達に追いつけていない子が中にはいます。
就学後に言葉についての苦手さが表面化してきたり学習面に困難を抱えるようになったりする子もいて支援が必要な場合もあります。

2~3歳頃で言葉が遅いなと感じている場合は言葉が出るようになっても、少なくとも就学前後までは言語発達の経過を丁寧に観察していくことが必要だと言われていますので、医師や専門職に相談しながら成長を見守っていきましょう。


参考文献

武田篤他(2001)特異的言語発達遅滞の予後決定因子に関する研究,音声言語医学42(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjlp1960/42/4/42_4_311/_pdf/-char/ja) (2024.4アクセス)

福田信二(2014)特異的言語障害研究の現状と課題,特殊教育研究52,https://www.jstage.jst.go.jp/article/tokkyou/52/4/52_317/_pdf(2024.4アクセス)

田中裕美子他(2001)特異的言語障害幼児の言語特徴の解明への試み,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcomdis1983/18/1/18_1_2/_pdf/-char/ja(2024.4アクセス)

田中裕美子編著(2023)ことばの遅れがある子どもレイトトーカーの理解と支援,学苑社

言葉の相談に行ったら親子教室を勧められた②

言葉の相談に行ったら親子教室を勧められた①では、誰かと一緒に何かを楽しむ事がコミュニケーション意欲を育て、言葉の発達に大切だというお話をしました。

お子さんは、お友達と遊ぶこともできるし、普段から一生懸命伝えることが出来ているということも多いと思います。

それでも、お友達や親子で遊ぶことで、ことばでのコミュニケーションをする場面を増やす為にわざわざ教室での経験を勧められることがあります。

きっと、お家ではお母さんやお父さんに「ジュース(ほしい)」「いや」「いいよ」等と言うことが出来るし、遊びの場面で、お友達におもちゃを譲ってあげたり、砂場で一緒に遊んだりできているのだと思います。

そうやっていろんな経験を積む事が出来ているのだけど、相談に来られた場では先生の言う事が理解できない、理解できてるけど指示通りに出来ないお子さんはいます。

相談の場面ではいつもと違う状況ですし、お父さんお母さんの言い方と違います。大人にとってはちょっとした違いであっても、子ども達には言っている事がすぐに理解できない事があります。

知らない場所で必要以上に強い緊張状態になってしまったり、逆に新しいことに気持ちが高揚してしまいお話が聞けなかったりというお子さんもいます。

ただ、そんなお子さんに「頑張れ」「いつも言えるでしょ」「おちついて」と言い聞かせて出来るようになるのではありません。

厚生労働省で児童発達支援ガイドラインにもある様に

強い不安や緊張を示す子どもに対しては、活動内容や環境
の設定を創意工夫し、情緒の程よい表出を促すとともに、人との関わりを広げていけるようにすることが必要である。また、少人数でゆったりと落ち着いた受容的な環境を用意することが必要である。

お家や自由な遊び場面で出来ていることをお母さんやお父さんと一緒に、家族以外の人と日常とちょっとだけ違う場面でも遊びを経験し、活動に参加出来るようになることは良い刺激になります。


参考資料:厚生労働省「児童発達支援ガイドライン 」

言葉の相談に行ったら親子教室を勧められた①

2歳ぐらいのお子さんで、親の言葉を理解しているのに、ことばが出なかったり、言葉が少ないという事が心配で相談に行ったら親子教室ややり取りの練習を勧められた。

そういう事はありませんか?

言語聴能訓練室でも、親子教室をお勧めすることがあります。

何故でしょう?

子どもは親の言葉を理解しているのに、ことばが出なかったり、言葉を話していてもなんと言いたいのか理解してあげられなかったりともどかしい思いを抱えているのに何故??と思われると思います。

子どものお話する力の3要素でも、お話しましたが言葉の発達には「コミュニケーション意欲(伝えたい気持ち)」がすごく大切です。

また、話せる言葉を増やすには分かる言葉をもっと増やしていくことも必要です。

親子で、ふれあい遊びや手遊びをしたり、絵本の読み聞かせを体験したりすることでお母さんやお父さんと”一緒に遊ぶという意識を高めていくことが出来ます。

お友達と物を共有したり、一緒に遊ぶ機会を沢山もつことで、お友達という意識も育っていくでしょう。

お母さん、お父さんが楽しいことをしてくれた。

あそこに行くと一緒に遊べるお友達がいる。

これらの経験は、コミュニケーション意欲を伸ばすための基礎になります。

そして、お家の人以外とのやり取りも上手になっていきます。

経験することで動きを表す言葉や気持ちを表す言葉、普段お家にはない物の名前を知る機会にも繋がります。

厚生労働省で児童発達支援ガイドラインでも

子どもの成長は、「遊び」を通して促されることから、周囲との関わりを深めたり、表現力を高めたりする「遊び」を通し、職員が適切に関わる中で、豊かな感性や表現する力を養い、創造性を豊かにできるように、具体的な支援を行うこと。

と書かれています。親子教室で色々な「遊び」ができるといいですよね。

親子教室をお勧めされたら1度参加してみてはいかがでしょうか


参考資料:厚生労働省「児童発達支援ガイドライン 」