発音(滑舌)様子を見ましょうと言われたら④

 

 

 

 こんにちは、言語聴覚士Sです。

 これまでお話してきたように、発音の練習を希望して「発音の練習をした方がいい」と言われたのに直接的な練習をすぐに始めない場合もあります。

 前回までに言葉を正しく理解することや音を聞き分ける力等、聞く力を育てることが優先の場合があることをお伝えしました。

 注意を向けることができる力

 言葉を正しく理解したり、自分の言葉を聞き分ける為にはまず、椅子に座ってジッとし目の前のことに注意を向けること、自分がすることに集中することが必要です。

集中していない子ども

 しかも子どもにとっては、「どうしてこんなことするの??」と思うようなことや、普段は意識したことがないようなベロの動きを練習するので、いつも以上に集中する力が必要になります。

 苦手な事に挑戦する気持ちも大事

 さらに、発音の練習を始める為には「別にしたくないけど」「自分がしたいことじゃないけど」やってみようと言われたことにも取り組む力が必要です。

 また、苦手だと思っている事も頑張ってやってみる気持ちも必要です。

 発音の練習を効果的に進める為には以前にも書きましたが、自分の「発音の誤り」に気づく力も必要です。しかし、自分の発音は間違っていると気づくことは、自分は「上手く話せない」という気持ちを感じてしまうことになるかもしれません。

 自分が上手くできないと思っている事を練習するのは、大人にとっても大変なことです。

 自分は「苦手なことがあるけれど、頑張れる」「ちょっと難しいことをするのも楽しい」

 そんな風に、思えるようになる為には生活の中の「できた」「がんばった」を積み重ねることがとっても大切です。

 体や手指を使う、耳で聞く、言葉を読み解く、自分の言ったことをチェックする。そして、集中する力、苦手な事にも挑戦する気持ち。発音の練習をしていく上で全て大切な事です。

先生や言語聴覚士に相談を

 ただ、これらの力があるないだけではなく、どこまで力がついてきているかを確認することも必要です。

 いつも、お子さんの近くにいると「どこまでできているか」はなかなか判断するのは難しいものです。

 通級指導教室の先生方や言語聴覚士は、「どんなことから練習したらいい?」「練習の開始のタイミングは?」等、お子さんの様子を総合的、客観的に評価します。

 言語聴能訓練室でも言語聴覚士が今後についてサポートさせていただきますので、ご相談ください。

関連記事

言葉の相談について  発音のお話①発音の発達  発音のお話②大人が発音の見本に  発音のお話③発音を育てる生活動作と遊び  

参考文献

中川信子,日本小児耳鼻咽喉科学会,子どものこころとことばの育ち―親子を共に支援するために,日本小児耳鼻咽喉科学会総会,2013

日本言語聴覚士協会,言語聴覚療法臨床マニュアル,協同医学書出版社,1992

発音(滑舌)様子をみましょうと言われたら③

 

 

 

こんにちは、言語聴覚士Sです。

    発音が上手になる為には体を動かすことも必要。発音の練習をする為には、身近でない人の言ってることばの意味も正しく読み解き、分かることが必要だとお話しました。実はまだまだ必要な力があります

    自分の発した「ことば」に間違いがなかったかチェックする力です。

言えているか言えていないかがわかる

 発音の練習を進めて行く上で、自分が「発音したい音」と「発音した音」が違っている事に気づいているかがとても重要になります。

 

 自分で正しく言えているかをチェックできなければ練習しても普段の生活で正しい発音を言えるようになかなかなりません。

 自分は「ねこ」と言いたいのに「ねと」になってしまう。だから、ことばの練習をするんだと、子どもなりに発音の練習に取り組む意味にもなります。

 言語聴能訓練室に相談にこられるお子さん達も、発音の誤りを周囲から指摘されてうまく発音出来ていないことは気付いていて、「言いにくいことばがある」と構音検査(発音の検査)の前に言ったけれど、構音検査の後にSTが「今日は言いにくい言葉あった?」とたずねると音の誤りに気づかず「(言いにくい言葉は)なかった」という事はよくあることです。

指摘や言い直しはさせないで

 だからと言って発音が違う事を発音の練習をする前から指摘しないようにしましょう。

 お家では、誤った言葉は大人がさりげなく正しい言葉で言い換えるなどして、正しい音を聞かせてあげましょう。そうすることで正しい発音と自分の発音を比べる機会をつくることができます。

 例)🐈子:「あ、ねとだ」→親:「ねこだね~」

 子どもには「言いたいことが伝わった」という思いを沢山経験させてあげてください。話すことが楽しいという経験を沢山重ねて、話す意欲も育ててあげることで積極的に発音の練習に取り組む気持ちを育てる為の土台も作ることが出来るからです。

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発音のお話②大人が発音の見本に

発音(滑舌)様子をみましょうと言われたら① 

発音(滑舌)様子をみましょうと言われたら②

参考文献

中川信子,子どものこころとことばの育ち―親子を共に支援するために,日本小児耳鼻咽喉科学会総会,2013

日本言語聴覚士協会,言語聴覚療法臨床マニュアル,協同医学書出版社,1992

新年のご挨拶

 

あけましておめでとうございます。

 令和3年は明るい出来事が皆さまに沢山ありますよう

 お祈り申し上げます。

 そして、少しでも皆さまのお力になれるよう、今後も研鑽を積んでいきたいと

 思っています。

 本年もどうぞよろしくお願いいたします 。

 言語聴能訓練室 スタッフ一同

 

 

発音(滑舌)様子をみましょうと言われたら②

こんにちは、言語聴覚士Sです。

 

 

 発音(滑舌)の相談にいった際に、発音については「様子を見ましょう」と言われたけれど「ことばを聞いて理解する力を伸ばす練習」を勧められることもあります。

  お母さん、お父さん以外が言っている事も分かる

 発音の練習をするためには、指示されたことを聞いて、これから何をすればいいのかを正しく理解する力が必要だからです。

 言われたことを 理解するためには、まず言葉が正しく聞こえていること、そしてことばの意味が分かることが必要です。

 子ども達は、意外とその場の状況や大人の身振りや目線等をヒントにして、言われている事を理解している事が多いものです。

 でも、発音の練習は状況等に関わらず「ベロを出して」「~しながら〇〇して」等の指示を常に出される練習です。

 だから、いつも一緒に過ごす保護者の方や先生の言っていることが分かる、そして色々な場面や身近でない人の言ってることばの意味も正しく読み解き、分かることも求められます。

 このように、発音の練習の前提として「ことばを聞いて理解する力を伸ばす」ことも大切なことなのです。

 次回は、自分の発音をチェックする力についてお話してみたいと思います。

*ことばを理解するためにできる遊びは、言語聴能訓練室のブログでも「ことばあそび」として紹介しています。参考にしてみてくださいね。

発音(滑舌)様子をみましょうと言われたら③へ

 

関連記事

発音(滑舌)様子をみましょうと言われたら①

発音のお話③発音を育てる生活動作と遊び

参考文献

中川信子,子どものこころとことばの育ち―親子を共に支援するために,日本小児耳鼻咽喉科学会総会,2013

日本言語聴覚士協会,言語聴覚療法臨床マニュアル,協同医学書出版社,1992

発音(滑舌)様子をみましょうと言われたら①

こんにちは、言語聴覚士Sです。

 

発音の相談に行ったら「ようすを見ましょう」と言われた

  言語聴能訓練室でも「滑舌が悪い」「言葉がうまく話せない」という相談をよくお受けします。

 発音の練習は早ければいいわけではなく、その子に適した練習を始める時期があります。

 その時期は、お子さんによって違いますが、4歳~5歳辺りから練習を始めるかどうかの見極めをすることが多いです。

 しかし、発音の相談に行っても「様子見」と言われることもあるかと思います。

 言語聴能訓練室でも「もう少し様子をみましょう」とお家で気を付けることや遊びをお伝えすることがあります。

 以前、発音のお話③発音を育てる生活動作と遊び では、口を使う遊びや食べることを書かせていただきました。

 発音を育てる為には、口だけでなく体を使って遊ぶことや手指をつかうことも大切です。

 今日は体を使った遊びや手指を使った遊びがどうして発音(言葉)の発達に大切なのか少しだけお話してみたいと思います。

体を思い通りに動かせることが大切

 運動の発達は、全身を使った動きから部分的な動きへ進んでいきます。全身運動レベルでの動きがまだまだ未熟な子どもは、当然指先や構音器官(唇や舌)などの細かな運動もうまくいきません。

 また、自分で見える体の部分の動きが上手に出来なければ、自分で見えない体の部分を思い通りに動かすのは難しいです。

 発音の相談にいったけれど「様子をみましょう」と言われたり、発音の発達がゆっくりだなと感じたりした際には、まず体を動かす遊びがしっかりできているかを見直してみましょう。

例えば、手を振って走る

 走ることは簡単な事のようですが、膝を曲げて足を動かせているか、腕を左右別々に動かすことができているか等、スムーズに走れているように見える時は全身がバラバラの動きをして色々な関節を動かすことが出来ています。

 まだ、体の使い方のぎこちない小さな子どもだとペンギン走りのように膝がピンと伸びたままだったり、右手と右足が一緒に前に出ていたりすることがあります。

 もちろん、走るだけでなくブランコに乗る、鉄棒につかまってぶら下がる。ジャングルジムを上る等も体を大きく使って遊ぶのには有効です。

ペンを持って線を書くこともいい

 また、体を大きく使って遊ぶだけでなく手指を使った遊びもどんどんしてみてください。新聞を破いたり、折り紙を折ったり、はさみや糊を使った工作もいいでしょう。

 線を思い通りに書けるように手や腕を動かす、紙を破いたり折ったりすることは、指先を使い、手先や腕等の力加減を繊細にコントロールすることが必要です。

発音はもっと繊細

 正しい発音をする為の練習には、唇や舌を数ミリ単位で調整することが求められます。

 例えば「さ」と「た」は絶妙な力加減と繊細な動きの違いで発音されます。

 更に、発音が正しく言えるようになる為には、他にも様々な条件が必要になってくるのですから、練習を始める時期は子どもによって違ってくるのです。

 次からは、発音の練習を始める為に必要な力についてもお話していきたいと思います。

次の記事へ発音(滑舌)様子をみましょうと言われたら②

参考文献

加藤正子・竹下圭子・大伴潔編著:構音障害のある子どもの理解と支援

日本言語聴覚士協会,言語聴覚療法臨床マニュアル,協同医学書出版社,1992

関連記事 発音のお話①発音の発達 、発音のお話②大人が発音の見本に
      発音のお話③発音を育てる生活動作と遊び 、言葉の相談について

     発音についての記事をまとめて読む

吃音⑤具体的な支援(指導者向け)

 こんにちは、言語聴覚士Sです。

 今日は、授業中にできる具体的な基本の対応についてお話したいとい思います。

 以下にご紹介する事は、もうすでに先生方がご指導の中で実践されている事が含まれているかと思いますが改めて確認していただければと思います。

 

話し方のアドバイスをしない

 子どもが言いかけた言葉を先取りして続きを代わりに言う事は必要ありません。最後まで自分の言葉で話しきることが大切です。

 「ゆっくり」「おちついて」等のアドバイスも効果がないとされています。

 また、最後まで話せた時には話の内容に注目し自分の思いが伝わったことを経験できるようにして頂きたいと思います。

 吃音の子どもは自分が「吃音が出ずに話せたか」と言う事に注目しがちです。発言が出来た時は「スムーズに話せたね」「詰まらなかったね」等の言葉への評価ではなく「この発表は〇〇がよかった」等、内容についての評価をして下さい。

からかいは許さない

 子供たちの中で吃音や吃音に伴う動作等へのからかいや嘲笑は、他のからかいや嘲笑と同じように対応していただきたいと思います。 

 吃音についての知識や情報がない子ども達にも「わざとそういう話し方をしているのではないこと」、「自分の努力ではどうしようもないこと」など、を丁寧に説明していただきたいと思います。

斉読をする

 「吃音の話(指導者向け)③学齢期の吃音の特徴」でもお話しましたが、本読みなど他の人と一緒に読む(一斉読み)等の条件下では吃音はほとんど出ないのが特徴です。

 授業での音読は、クラス一斉の音読にしたり二人組の音読にしたりするなどの形をとってみると効果的です。

 5回のシリーズで更新させていただいた吃音の話(指導者向け)は、今回で終了です。今回の記事が吃音だけでなくことばに困り感のある子ども達に適切な支援や配慮が行き届くよう目配りされている先生方の目に留まったなら幸いです。

【おすすめ吃音関連サイト】以下リンクは外部サイトに移動します。

吃音ラボ

全国言友会(吃音(きつおん)のある人のセルフヘルプグループ)

参考書籍: 菊池良和, 吃音のことがよくわかる本, 講談社, 2015年

     吃音のことがよくわかる本

吃音④子ども達が受けたい支援(指導者向け)

こんにちは、言語聴覚士S です。今日は吃音がある子どもたちが受けたいと思っている具体的な支援について触れてみたいと思います。

 

吃音が残っても困らないように

 2~4歳の20人に1人。約5%が吃音を発症(発吃)するといわれています。

 発吃から3年で、その内男の子なら6割、女の子なら8割の子が自然と吃音が消えていきます。

 しかし、100人に1人は吃音が残ります。

 どの子が、自然に消えていくのか、長く続くのかは予測がつきません。

 しかし、学童期になってもなお吃音が自然に消えていない場合、吃音が長く続くかもしれないことを考慮し、子どもの近くにいる先生方だからこそ普段の授業から支援していくことが出来ます。

授業中にしてほしい支援 

 

 

 

 

 吃音があるからといって、すべての子どもが同じ支援を望んでいるわけではありません。まずは、どういった支援、配慮を望んでいるのか本人と話し、確認することが大切です。

・ことばの先取りをしない

・話し終えるまでゆっくりまつ

 特にこの2つは多くの子どもが授業中の支援として望んでいることがわかります。

 ことばがつかえて苦しそうだからと助けるつもりが、かえって子どもの話す意欲をそぐこともあります。

 聞き手が焦らず待つだけで、救われる子どもも多くいることを先生方に知っていただければと思います。

次回の吃音の話は、具体的な支援についてです。

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全国言友会(吃音(きつおん)のある人のセルフヘルプグループ)

参考書籍: 菊池良和, 吃音のことがよくわかる本, 講談社, 2015年

     吃音のことがよくわかる本

出前講座

言語聴覚士Kです。

先日、出前講座に行ってきました。

市内の子育て支援センターで講話「ことばの話」をさせていただきました。

0~3歳児の親子5組が参加され、アットホームな雰囲気でみなさん熱心に聞いて下さいました。

みなさんの子育てへの熱心さに私も感心しました。

コロナウィルス感染防止の対策について配慮しつつ引き続き出前講座を行っていこうと考えております。

申し込み希望の方は こちらをクリックしてください。

 

お知らせ ことばに関する出前講座のご案内と申込方法について

吃音③気になる子どもがいるとき(指導者向け)

こんにちは、言語聴覚士Sです。

気になる子どもがいるとき

 前回までに、吃音の具体的な症状と吃音の問題点を書かせていただき、「ことばの困り感のサイン」についてもご紹介しました。

 先生方は、改めて子どもたちの様子を観察してくださったことと思います。

 そこで、気になった子どもがいる先生もいなかった先生にも、今日は学齢期の吃音の特徴吃音以外も気になる子どもについて知っていただきたいと思います。

 

学齢期の吃音の特徴

 
 学齢期の吃音の特徴としては以下のようなものがあります。ただし、個人差がとても大きくすべてが当てはまるわけではありません。

波がある

 吃音の症状には波があります。吃音の波の周期は、個人差が大きいのですが1ヶ月から数ヶ月単位で良い時期と悪い時期を繰り返すことが多いようです。

吃音が出にくい場面と出やすい場面がわかれている場合があります。

 例えば、国語の時間の音読場面ではほとんど吃音が出てこない一方で、友達と雑談する時には吃音が多く出てしまう場合があります。また、その逆の場合もあります。

 園や学校では、吃音の症状が殆どみられないのに、家では症状が強く出ているという場合もあります。

  多くの吃音の人は、独り言をいう、動物や赤ちゃん等しゃべらない相手に対して話しかける、歌を歌う、本読みなど他の人と一緒に読む(一斉読み)等の条件下では吃音はほとんど出ません。

 

吃音の出やすい言葉と、出にくい言葉があるのも特徴です

 吃音の症状が出ることを避けるために、吃音が出にくい言葉に言い換えて遠回しな表現を用いたり(「日曜日」と言う代わりに「3日後に」)等の言葉を言い替える工夫をするようになります。

 工夫が全て悪いわけではありませんが、言いたいことをうまく伝えられない経験を積みかさねてしまう事にもつながる可能性もあります。

 

心理的な問題だけが突出して大きくなっている場合があります

 特に学年が上がってくると、本人が話し方の工夫や話す場面を避けることにより、吃音の症状は目立たなくなっていますが「言いたいことが言えなかった」等の思いをため込んでしまう事があります。

 先生や周囲の生徒が話し方が気になる、気にならないにかかわらず、本人の困り感に寄り添っていただきたいと思います。


吃音以外にも気になることがあるとき

行動面や学習面も気になる  

 吃音の子どもの中にも、吃音だけでなく行動面や学習面が気になる子どもや既に支援や配慮をされている子どももいるかと思います。

 吃音を持つ子どもの中にも、話し方だけでなく行動やコミュニケーションでも気になる子どももいます。

 さらに、併存する障害や疾患に合わせた支援や配慮も必要になります。

発音の誤りがある

 また、吃音の子どもの中の多くには発音の問題(構音障害)がある子どもも多くいます。

 吃音であっても、構音障害は訓練することでほとんどが正しく発音できるようになります。

 ただ、自分の発音に向きあう事が求められる構音訓練を行う事で吃音の症状が強くなることが時にあります。

 その為、子どもに負担がかかっていないかを見極めながら慎重に構音訓練を進めていくことが必要になります。

 吃音だけでなく、ことばの事で子どもが悩んでいる様子であれば、どのように対応するかご本人、保護者の方と話をしていただきたいと思います。

 そして、通級指導教室の先生や専門機関(言語聴覚士等)と連携の中で、どのような支援が必要か相談していただければと思います。

 次回の吃音の話は、吃音の子どもが受けたいと思っている支援についてです。

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【おすすめ吃音関連サイト】以下リンクは外部サイトに移動します。

吃音ラボ

全国言友会(吃音(きつおん)のある人のセルフヘルプグループ)

参考書籍: 菊池良和, 吃音のことがよくわかる本, 講談社, 2015年

     吃音のことがよくわかる本

吃音②吃音の問題(指導者向け)

こんにちは、言語聴覚士Sです。

前回は、吃音の症状について書かせていただきました。

今日は、吃音の原因と吃音による問題についてです。

吃音の発症原因

 結論から書くと、吃音の発症(発吃)の原因は不明です。

 今のところ「脳の働き方のくせ」と「ことばの急速な発達を促す環境」などが複数からみあっていることが分かってきています。

 

古くに言われていた

・左手矯正をした為

・幼児期に弟妹ができたための愛情不足

・激しく怒りすぎてしまったこと等虐待の兆候

・引っ越しが多く、環境が落ち着かない

・性格の問題

・運動発達の問題

・言葉が流暢でない事を本人に意識させたから

・吃音の真似をしたから

・身近に吃音の人がいたからうつった

・親の接し方やストレス

これらは、研究によって否定されています。


「吃音」の問題

 
吃音の問題には、大きく「言葉の問題」と「話し手の心理的な問題」、「周囲の誤解や偏見、過剰な反応による問題」 と分けられます。

言葉の問題」とは、前述した言葉の繰り返し、引き伸ばし、難発等のいわゆる「どもる」話し方の問題。

 

話し手の心理的な問題」とは、吃音によって、話す前に「うまく話せなかったらどうしよう」と不安になったり、吃音の症状が出たことで、落ち込んでしまったりする等の問題。

 
周囲の誤解や偏見、過剰な反応による問題」とは、吃音の話し方を「へん」、「おかしい」ものとしてからかいやいじめの対象としたり、「どもりは頭が悪い」「どもりはうつる」など科学的な根拠のないことをもとに吃音に対応したり、「ふざけている」「滑らかに話す努力をしていない」と本人の対応不足だと責めたりすること等の問題。

大きく分けて、これら3つを軸に吃音の問題の大きさをとらえていきます。

吃音の症状を根本的に治療することは難しくても、吃音による問題を軽減していくことは可能だと考えられます。

問題の大きさを3軸でとらえる

         菊池良和(2015)吃音のことがよくわかる本 講談社まず聞き手が、内容に注目して話をするようにする。

話し手は、吃音が出ても、内容を評価されることで話す意欲をなくさないでいられる。

聞き手が吃音でも大丈夫という姿勢で向き合いつづけていることで話す意欲を失わず、積極的に話しをすることができ、吃音の症状も軽減すると期待できます。また、話し方が変わらなくても悩みを減らすことは出来ます。

努力や訓練で吃音の症状はゼロにはなりません。聞き手である先生やクラスメイトの反応を改善することが、もっとも大切になります。

次回は、学齢期の吃音の特徴吃音以外も気になる子どもについて知っていただきたいと思います。

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吃音ラボ

全国言友会(吃音(きつおん)のある人のセルフヘルプグループ)

参考書籍: 菊池良和, 吃音のことがよくわかる本, 講談社, 2015年

     吃音のことがよくわかる本