こんにちは、言語聴覚士Sです。
これまでお話してきたように、発音の練習を希望して「発音の練習をした方がいい」と言われたのに直接的な練習をすぐに始めない場合もあります。
前回までに言葉を正しく理解することや音を聞き分ける力等、聞く力を育てることが優先の場合があることをお伝えしました。
注意を向けることができる力
言葉を正しく理解したり、自分の言葉を聞き分ける為にはまず、椅子に座ってジッとし目の前のことに注意を向けること、自分がすることに集中することが必要です。
しかも子どもにとっては、「どうしてこんなことするの??」と思うようなことや、普段は意識したことがないようなベロの動きを練習するので、いつも以上に集中する力が必要になります。
苦手な事に挑戦する気持ちも大事
さらに、発音の練習を始める為には「別にしたくないけど」「自分がしたいことじゃないけど」やってみようと言われたことにも取り組む力が必要です。
また、苦手だと思っている事も頑張ってやってみる気持ちも必要です。
発音の練習を効果的に進める為には以前にも書きましたが、自分の「発音の誤り」に気づく力も必要です。しかし、自分の発音は間違っていると気づくことは、自分は「上手く話せない」という気持ちを感じてしまうことになるかもしれません。
自分が上手くできないと思っている事を練習するのは、大人にとっても大変なことです。
自分は「苦手なことがあるけれど、頑張れる」「ちょっと難しいことをするのも楽しい」
そんな風に、思えるようになる為には生活の中の「できた」「がんばった」を積み重ねることがとっても大切です。
体や手指を使う、耳で聞く、言葉を読み解く、自分の言ったことをチェックする。そして、集中する力、苦手な事にも挑戦する気持ち。発音の練習をしていく上で全て大切な事です。
先生や言語聴覚士に相談を
ただ、これらの力がある・ないだけではなく、どこまで力がついてきているかを確認することも必要です。
いつも、お子さんの近くにいると「どこまでできているか」はなかなか判断するのは難しいものです。
通級指導教室の先生方や言語聴覚士は、「どんなことから練習したらいい?」「練習の開始のタイミングは?」等、お子さんの様子を総合的、客観的に評価します。
言語聴能訓練室でも言語聴覚士が今後についてサポートさせていただきますので、ご相談ください。
関連記事
言葉の相談について 発音のお話①発音の発達 発音のお話②大人が発音の見本に 発音のお話③発音を育てる生活動作と遊び
参考文献
中川信子,日本小児耳鼻咽喉科学会,子どものこころとことばの育ち―親子を共に支援するために,日本小児耳鼻咽喉科学会総会,2013
日本言語聴覚士協会,言語聴覚療法臨床マニュアル,協同医学書出版社,1992